現在、亡くなった人の15人に1人が身寄りがなく、行政機関に火葬されるといわれています。

核家族化やライフスタイルの多様化の影響もあり、家族で支え合うのが難しい時代です。たとえ、結婚し、子どもがいたとしても、一方と死別したり、子どもと疎遠であれば、いつ誰にも頼れない状況に置かれるかはわかりません。ひとりで老後を迎えると、住居の確保、介護や入院の手続き、お墓、そして遺産はどうなるのでしょうか? 

「ひとり老後」を巡る課題やトラブルは日に日に関心が高まっています。そんななか、長年、この問題を研究してきた日本総合研究所シニアスペシャリストの沢村香苗氏の新刊『老後ひとり難民』が話題となっています。今回は特別に本書より、ひとり老後に陥ってしまうリスク、病院や自治体などの現場が直面する課題などをお届けします。(全4回の2回目)

●第1回:「自分は大丈夫だろう」は通じない…誰にでも潜む身寄りない「ひとり老後」リスク

※本稿は、沢村香苗著『老後ひとり難民』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。

「老後ひとり難民」が亡くなった場合、誰が死亡届を出すのか

亡くなったあとに引き取り手のない遺骨は、「無縁遺骨」と呼ばれます。

毎日新聞が全国の政令指定都市を対象として行った調査によれば、2015年度に亡くなった人の約30人に1人は遺体の引き取り手のない方だったといいます。

また日本経済新聞の記事によれば、2018年度に全国20の政令指定都市が受け入れた無縁遺骨の数は8287柱にのぼり、この数は5年前の1.4倍だということです。無縁遺骨が増加している背景には、核家族化や人々のつながりの希薄化があるのでしょう。

身寄りのない高齢者が増えたことにともない、「亡くなっても引き取り手がいない」というケースも増えているのです。

「老後ひとり難民」が亡くなった場合、死亡届を誰が出すのかが問題になるケースがあります。実は、死亡届は誰でも出せるわけではありません。戸籍法では、死亡届の「届出義務者」として、「同居の親族」「その他の同居者」「家主」「地主」「家屋管理人または土地管理人」と定めています。これら届出義務者がいない場合などで、公立病院だと病院長が届出義務者になるみたいですが、それ以外の病院だと義務者にまでならなさそうです。

このほかに届け出をすることが認められる「届出資格者」として「同居の親族以外の親族」「後見人」「保佐人」「補助人」「任意後見人」「任意後見受任者」が定められています。つまり、同居者がいたり賃貸住宅や介護施設に住んでいたり、あるいは病院で亡くなったりした場合は、死亡届の届出義務者がいますが、持ち家に住む独居高齢者の場合、届出義務者が不在となってしまうわけです。

もちろん同居親族以外の親族が届け出てくれるケースや、認知症などで後見人がついているなら、その後見人が届け出てくれるケースもあるでしょう。しかし、そういった人がいないケースのほうが多数派といえます。

また、家主・地主や病院長のなかには、「届出義務者」であっても、死亡届を出すことをためらう人もいます。こうした場合、法に規定のない「死亡記載申出書」を提出することで、戸籍に死亡を記載する手続きが取られることもあります。