<前編のあらすじ>

村尾(41歳)は、田舎に住む母親が病気になったことがきっかけで、これまで興味がなかった結婚に向けてマッチングアプリを始めた。だが、やりとりをしている女性とはすぐに連絡がつかなくなり、いら立つ日々が続く。

大学時代からの旧友に相談するも、働きながら小説家を夢見ている村尾は、自分の作品執筆のため「年収500万以上、30代前半、文学に明るく家事も子育ても一手に引き受けてくれる女性」というむちゃくちゃな条件を相手に求めていたことが発覚した。

友人はドン引きし、そのままではダメだと諭すが、逆に「結婚生活が面白くないから、自由に結婚を目指せる自分をひがんでいるのだ」と上から目線で言うことをきかない村尾だった。

●前編:身の程知らずな条件に既婚友人もドン引き…非モテ41歳婚活男性を打ちのめした「お相手の意外な経歴」

本命になり得そうな相手と会うことに

武知との飲み会から2週間後、村尾はマッチングアプリで知り合った女性と会うことになった。相手の女性は由美子といい、メッセージのやり取りでは好きな小説の作品が一緒ということで盛り上がった。

そこから会うまでの約束は自然――いや、必然で、今日という日を迎えたのだ。夜ということもあって、スペインバルを予約し、そこで落ち合うことにした。今までは外食にはあまり興味のなかった村尾だが、マッチングアプリを始めてから、いくつかデートで使えそうな店をピックアップしていて、この店もその内の1つだった。

先に予約していた個室に入る。しばらく携帯を触っていると、ドアが開き、そこに現れたのが由美子だった。

「あ、どうも。村尾さん、ですよね?」

村尾は立ち上がり、うなずく。

「ええ、どうぞ。お座りください」

ちらりと顔を見るが、登録されている写真とあまり誤差はない。大きな加工などは施していなかったようだ。最近の加工アプリは進化していて、なかなか見抜くことが難しくなっている。加工詐欺と呼ばれるものらしいが、村尾も1度だけ出会ったたことがあった。しかし由美子は写真の通りの見た目をしていて、アプリの写真で必要以上に飾った自分を見せようとしていないところにも好感が持てた。