保険だけではなかった勧誘の内容

金井さんが指定したのは、超絶おしゃれなワインバーでした。周りは、モデルのようにきれいな女子のグループや、高そうなスーツを身に着けたイケオジばかりです。

しばらくは投資や会社の話で盛り上がり、おいしいワインや料理に夢見心地になった頃、金井さんがこんなふうに尋ねてきたのです。

「結菜ちゃんは保険に興味ない?」

金井さんが私にいろいろ良くしてくれるのは、保険の勧誘をしたいからだろうなとはうすうす感づいていました。それが仕事なのですから、ある意味当然です。

私自身、生命保険に加入していなかったこともあり、お世話になった金井さんのお役に立てるなら、契約をしてもいいかなと考えていました。

しかし、金井さんが持ち掛けてきたのは、単なる保険契約だけではありませんでした。

金井さんの会社は保険の代理店だけでなく、AI(人工知能)やビッグデータを活用した金融サービスなど、金融関連の業務を複数扱うベンチャー企業のようでした。社長はベンチャー界でも顔の広いやり手で、新NISAによる投資ブームを業務拡張のチャンスと捉え、資金調達のために「私募債」を発行することになったのだそうです。

「私募債は普通の社債とは違って、選ばれた投資家しか買えないの。でも、社長が『うちで保険を契約してくれている身元のしっかりした人なら引き受けをお願いしてもいい』って言うの。償還は5年後、年20%くらいの利息を想定していて結構お得だから、結菜ちゃんにも声をかけてみようと思ったわけ」

確かに、20%の利息は魅力的でした。新NISAの積み立てをしていても、それだけのリターンが得られるとは限りません。しかし、こちらは債券ですから、5年間持っているだけで利息が手に入ります。