ここで読者の中には、疑問を呈する向きもあるはずだ。そもそも下落局面で追加投資のタイミングをどうやって見極めるのか、投資枠の満額利用を前提としないというのは新NISAのメリットを最大限活用したことにならないのではないか、といったところだろう。

後者から先に述べると、その通りだ。追加投資のタイミングを見極めるのは極めて難しい。よって、状況次第では、筆者は追加投資を見送ってもよいとさえ思っている。新NISAの満額利用による節税メリットよりも、元本毀損のリスクを極力抑制したいと考えているからだ。

とはいえ、最初から諦めるのは業腹だ。なので、筆者は、下落局面では、適切なポイントで分散して買いを入れていくつもりだ。取りあえず下げが一巡したと思われる局面で、ごく少額の打診買いを入れ、全体の持値をわずかでも改善する。この新たな持値を、その後の実勢価格と比較し、相場動向をにらみつつ、さらに買い下がるか、見送るか決めていく、といった案配だ。

実際に、新旧NISAとは直接関わりはないが、筆者はこのやり方をリーマンショック後の2009年に実行した。その際、株価チャートやオンライン証券が開示するETFの価格別の売買発注状況などを参考にはしたが、最終的な判断は全くの主観だ。なので、自分にはムリ!とお考えの方におススメするつもりはない。ただ、定額積立を利用しているのであれば、急落した場合も、それをストップしないで、と切に訴えるのみだ。せっかくの持値引き下げの機会を放棄するのでは定額積立を始めた意味がないからだ。

6. 債券運用を考慮しなくともよいのか(1.(2)ニ))
前項に絡んで、これもよく耳にする話だ。すなわち、シニアになるにつれ年齢相応にいろいろモノ入りになることが多いから、株式の比率を引き下げる代わりに債券の比率を増やすべき、ということを前提としているものと推測する。

筆者に関していえば、これは当てはまるような、当てはまらないような、微妙なところだ。表面上、債券比率が高いのは事実だ。したがって当てはまると見ることもできる。ただし、筆者の場合、債券保有の目的がモノ入り対策を意識したものではない。したがって、個人的には当てはまらない、と言いたいところだ。

繰り返すが、筆者が債券を保有する目的は、既に述べたように、市場の好不調の波いずれでも収益を獲得することにあり、モノ入りになった場合に備えての資金確保のためではない。
仮に、資金が必要になった場合には、市場が「アブノーマルな状態」になることを想定して保有している追加用の資金を流用して可能な限り賄うつもりだ。

ではそれで賄えなくなったらどうするか? その場合、筆者は、投資済みのファンドを「輪切り」することを考えている(「輪切り」とは、3つのファンドを、いずれにも偏ることなく、売却して資金を捻出することだ)。このために、筆者は、単に株式ファンド一択とするのではなく、これと異なる値動きが期待できる債券ファンドを2種類選んでいる。すなわち、市場の好不調に対応できるようファンドを選択したことが結果的にモノ入り対策にもなっている、という見方もできる。

一方、さらに年齢を重ねていくにつれ、債券の比率を増やしていくつもりは(今のところ)ない。ある程度の積立ができた後に、固定収入が減り、資金が入り用になるといった事態が生じた場合には、やはり「輪切り」により資金を捻出していくつもりだ。あるいは、債券ETFの分配金を再投資することを見合わせて、現金配当を得ることにするかもしれない(ただし、この場合、分配金を再投資できず、パフォーマンス劣化が避けられないのが難点だ)。

以上が筆者に限った場合の話だが、せっかくの機会なので、話を膨らませて、「シニアになるにつれ債券比率を増やすべき」というロジックの妥当性につき、次回、筆者なりに考えていることを披露しておこう。