家事をめぐる夫婦喧嘩を改善するテスト

カーネマンは著書『ファスト&スロー』の中で、利用可能性ヒューリスティックの活用法に触れています。

結婚している夫婦それぞれに、「家の掃除や整理整頓」「ゴミ出し」「社交的な行事」などに関する「自分自身の貢献度」をパーセントで聞くというものです。夫と妻の答えたパーセンテージの合計は、多くの家庭で100%を超える結果になるでしょう。

夫も妻も自分がやっている家事について相手がやっている家事よりも、はっきり思い出すことができるため、自分のパーセンテージを高く評価してしまうのです。

実際にこのようなテストをすれば、本当に自分が家事をやっていたのか、相手がどれほど努力しているかを考えるきっかけとなるでしょう。それを機に夫婦のコミュニケーションが円滑になり、それぞれが相手を思いやるようになるかもしれません。

このテストは夫婦に限らず、家族であっても、仕事仲間であっても活用できるので試してみてはいかがでしょう。

人間は誰しも自分の経験が絶対だと思ってしまいがちです。そして、その裏側では利用可能性ヒューリスティックが働いています。

心理的バイアスは、自分一人の判断ミスで終わるものではなく、人間関係にも影響を及ぼします。このような心の仕組みを知ることで、人間関係のトラブルを避けることもできそうです。行動経済学の知識は、こんなところでも役立つものなのです。

●第2回は【「なぜか解約できない…」行動経済学の専門家がサブスクを継続してしまう巧妙な仕掛けを明かす】です。(7月9日公開予定です)。

世界最先端の研究が教える新事実 行動経済学BEST100

 

著者 橋本之克

出版社 総合法令出版

定価 1,650円(税込)