経済的不安の最大要因は老後資金だが…
では、ファイナンシャル・ウェルビーイングを実現するうえで「個人が抱えている経済的な不安」の最大要因は何でしょうか。資産のミライ研究所の調査によると、各年代におけるお金の不安の要素は、なんとここまで例にとってお話ししてきた「老後資金」がどの年代でも1位となっています【図表3】。これは、国民全体の不安要因だといっても過言ではないかもしれません。
【図表3】 お金に関する不安(複数回答可) ※上位5項目
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(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)
特に、年金制度に対する不安は大きそうです。厚生労働省の調査(2019年社会保障に関する意識調査)によると、老後の生計を支える手段として、1番目に頼りにするものは、「公的年金(国民年金や厚生 年金など)」が最も多く55.9%です。一方で、公的年金が老後生活に十分であるかどうかの不安も53.1%と大きいことがわかります。収入として頼りたいものの、頼れるか不安、というのが正直なところかもしれません。これだけ多くの方が頼りにしている収入源ですので、年金制度に対する“正しい理解(=学び)”も、老後資金不安を解消する一助になるのではないでしょうか。
もちろん、現在の公的年金制度は、老後生活をすべてカバーできる設計ではありません。しかしながら、終身で定期的に受け取れる重要な社会保障制度です。公的年金などの社会保障制度の役割を「セーフティネット」としてしっかり理解し(=学び)、そのうえで、人生100年時代を自分らしく生きるために、収支計画ならびに今後のライフプラン・マネープランを立て(=把握)、適宜信頼できる相手に(相談)しつつ、「長く働く」ことや、公的年金以外の「私的年金」を活用すること、自助努力として「貯蓄/資産運用」を計画的に行う(=行動)ことが重要となります【図表4】。まさに、人生100年という長期の時間軸で、自身の「家計を経営する」観点で考え、自律的に行動することが重要そうです。
【図表4】 公的年金と他収入の位置づけ (イメージ)
(出所)三井住友トラスト・資産のミライ研究所作成
次回はファイナンシャル・ウェルビーイングの最終回として、ファイナンシャル・ウェルビーイング取り巻く世の中の流れについてご紹介します。