最終利益が倍増 債券損失の改善と「負ののれん」が押し上げ
足元の業績を確認しておきましょう。
ふくおかFGの前期(2024年3月期)の業績は以下の通りです。増収増益となり、業績は大きく拡大しました。特に純利益は96%増と、ほぼ倍増しています。銀行本来の業務による諸利益も大きく改善しています。
【ふくおかFGの業績(2024年3月期)】
・経常収益:4047億円(+22.2%)
・経常利益:569億円(+13.8%)
・純利益:612億円(+96.4%)
※()は前期比
※参考:業務粗利益2290億円(+18.2%)、業務純益687億円(+30.5%)、コア業務純益1004億円(+7.5%)
最終増益の主な要因は2つあります。債券ロスカット損失のはく落と、負ののれん発生益です。
債券ロスカット損失のはく落は、債券運用の損失が小さくなったことを意味します。2023年3月期は外債の売却損で261億円を計上していました。2024年3月期も円債で損失を出しますが、損失額は134億円に縮小しています。
負ののれん発生益は、福岡中央銀行の統合に伴い生じたものです。負ののれんとは、一般に取得費用が被買収企業の純資産額を下回る(安く買収できた)場合に発生する利益を指します。
福岡中央銀行は2023年10月に連結され、ふくおかFGに215億円の負ののれんが生じました。2024年3月期は信用基準の強化に伴い信用コストが一時的に増加しましたが、負ののれんで相殺され、特殊要因は差し引き5億円のプラスとなっています。
なお、これら一過性の要因を除いても純利益は増加しています。貸出金と有価証券の増加を主因に、主に国内で資金利益が改善したことが利益を押し上げました。ただし国際部門の資金利益は悪化しています。海外の金利上昇で調達コストが増加したことによるものです。
利ざやの改善はまだ道半ばのようです。ふくおかFGは、今後は貸出金の入れ替わりが進むことで資金利益が拡大していくと説明しています(出所:ふくおかFG 決算説明会資料)。
業績の見通しも確認しておきましょう。
ふくおかFGは今期(2025年3月期)も増益を見込んでいます。特に経常利益は大幅な増加となる計画です。これは前期の一時的な損失(円債ロスカット、信用コストの増加)がなくなることが主な原因です。また負ののれん発生益もはく落するため、経常利益と比べると純利益の増益は小幅にとどまる見通しです。
【ふくおかFGの業績見通し(2025年3月期)】
・経常収益:非開示
・経常利益:995億円(+74.8%)
・純利益:685億円(+12.0%)
※()は前期比