自己実現、キャリアアップを支援する注目の制度
従業員エンゲージメントを高める施策として、社内公募制度や社内FA(フリーエージェント)といった従業員の自己実現やキャリアアップを支援する制度を導入する企業もあります。個人のやる気を引き出すと同時に社内の活性化を図ることが期待され、「こうした支援制度はエンゲージメントにプラスに働きます」と髙宮氏。
同様に注目されるのがピアボーナス制度です。従業員同士で感謝や称賛のメッセージを送り合う制度で、送った感謝をほかのメンバーにも可視化できるツールなどを使えば、同僚の良い取り組みを知ることが可能です。部署間や出社組・テレワーク組などの垣根を超えて感謝や称賛の輪が広がることは組織にとって大きなメリットといえます。「第一生命経済研究所で行ったピアボーナス制度の実証実験では、エンゲージメントの各指標が有意に上昇しました(図表⑤)」(髙宮氏)。
図表⑤ 社内エンゲージメント調査結果(ピアボーナス導入前2021年5月と導入後2021年12月の比較)
ピアボーナス制度について社内からは、「細かい日常業務について、感謝が共有され、上司・同僚からもリアクションがあるので、モチベーションが上がる」「投稿を話題に今まで関わりが少なかった他部署の人とのコミュニケーションが取れる。コラボレーションの事例も出ている」 などの声が上がっているそうです。
ほかには、相対的なランク付けをしない「ノーレイティング評価」という制度も広がりつつあり、グローバルソフトウェア大手のアドビなどで導入されています。
従来の相対的な評価では、例えばチーム全体が非常に良い成果を出した際に、その高い成果の中でランク付けせざるをえず、全員に高評価をあげたくてもできないという課題があります。
一方で、「ノーレイティング=ランク付けをしない」でどう評価するのかというと、「上司と部下の間できめ細やかな1on1の対話を行い、個人の目標を設定し、フィードバックを行って成果を評価していきます。単なるノーレイティングではうまく機能しないためマネージャーの力量が非常に重要になってくる評価制度といえます」(髙宮氏)。
いずれも上司のリーダーシップが問われるため、リーダーシップ教育が重要となります。そこで注目され始めているのが「サーバント(支援型)リーダーシップ」というあらたなマネジメントスタイルです。