金融資産を積み上げても、幸せの実感には限界がある
「お金を貯めるほど幸せなのか」というテーマについて調査したデータがあります。「金融資産と幸福度を比較した調査(図表①)によると、金融資産が増えるにつれて幸福度は上昇しています。ただし、一定程度(金融資産500万~700万円以上)を超えると、その上昇率は大きく鈍ってくる傾向が分かります」と第一生命経済研究所の村上隆晃研究理事。
図表① 家計の金融資産と幸福度
縦軸に幸福度、横軸に金融資産を取ったグラフでは、資産がない人の幸福度は4.9点。「金融資産500万円くらいまでは比例して幸福度が上がっていきますが、その先は横ばい傾向にあります」(村上氏)。確かにグラフは500万~700万円付近で5.9点、その後は4000万円付近で6.6点となっており、平行線をたどっています。
家計満足度を6まで高めれば、4000万円貯めるのと変わらない幸福度に
もう一つの調査結果、家計満足度と幸福度について(図表②)を見てみましょう。
図表②:家計満足度別・幸福度
グラフは縦軸に同じく幸福度、横軸には現在の家計状況について「非常に不満」を0点、「大変満足」を10点として取ったものです。その結果、家計満足度が6の段階で幸福度は6.6点となっています。この6.6という数値は、図表①で金融資産を4000万円持っている場合の幸福度と同じです。
4000万円を貯めるために必死に節約するよりも、家計満足度を高める方が取り組みやすくはありそうです。さらに、図表①では金融資産を貯めてもある程度で幸福度は頭打ちでしたが、図表②では家計満足度を高めるにつれ、幸福度が比例して高まっています。
この結果からも、幸福度を上げるには家計満足度を高める方が効果的であろうことが見て取れます。では、どうすれば家計満足度を高めることができるのでしょうか。「家計満足度を高めるには家計収支をコントロールし、将来の家計の見通しを立てることが重要です」と村上氏。
そのために大切な考え方が「ウェルビーイング」です。ウェルビーイングとは一言でいえば「幸せで満ち足りた状態」のこと。なかでも、「お金の面で現在はもちろん、将来も安心できるようにし、人生を楽しむため、計画的にお金を使える状態を実現することをファイナンシャル・ウェルビーイングといいます」と村上氏。