生産性を高める「従業員エンゲージメント」
従業員エンゲージメントは、①仕事へのエンゲージ(ワーク・エンゲージメント)と、②組織へのエンゲージ(組織コミットメント)の2つから成り立っています(図表①)。
図表① 従業員エンゲージメントの要素
「ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対するポジティブで充実した心理状態のこと。活力(イキイキと働く)、熱意(仕事にやりがいや誇りを感じている)、没頭(仕事に熱心に取り組む)、この3つがそろっているとワーク・エンゲージメントが達成されている状態といえます」と髙宮氏(図表②)。
図表② ワーク・エンゲージメントの要素
一見すると個人の資質にもよりそうですが、どうなのでしょうか。「ワーク・エンゲージメントを高める要素は、“仕事の資源”と“個人の資源”に大別されます(図表③)。個人の資源とは希望、自己効力感(自信)、レジリエンス(逆境を乗り超える力)、楽観性の4つからなる個人の資質のことですが、いずれもトレーニングなどで高めることができます」(髙宮氏)。
図表③ 仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)
もう一方の仕事の資源は、良好な人間関係、上司・同僚からの支援、仕事の裁量といったいわゆる職場環境、組織風土にあたります。仕事の資源を高めるにはこれらの整備や改善が求められます。
従業員エンゲージメントを構成するもう一つの要素に組織コミットメントがありますが、こちらも高めることが可能です。「組織が自分のウェルビーイングに配慮してくれているか、自分のことをきちんと考えてくれているかという、組織からのサポートを知覚することで組織コミットメントが上がります」と髙宮氏。
図表④ 組織コミットメントの向上プロセス
そのためには、上司の支援や手続き公正性といったプロセスが必要です(図表④)。手続き公正性とは、「例えばAさんの評価は40、Bさんは60という結果となった場合に、それぞれがなぜ40なのか、60なのかという理由が公正に判断されたというプロセスが明らかであることをいいます」(髙宮氏)。つまり評価に差があったとしても、その判断理由が明らかにされれば納得感があるということといえます。
上司の支援や手続き公正性が組織コミットメントを上げる半面、組織内政治はマイナスに働きます。例えば上司が有力な派閥の意向に沿うことを重視するあまり、部下の仕事を正当に評価しないといった組織内政治が働くと、部下は不信感を募らせてしまいます。
これらの課題は一度に解決できるものではありません。「取り組みやすいのは上司の支援の項目です。本連載第3回『職場も家庭も! 本音を言えない関係性を打ち破る「心理的安全性」とは?』 で解説した“心理的安全性”の構築と同様に、組織コミットメントの醸成においても上司がキーマンとなります」(髙宮氏)。
こうしたワーク・エンゲージメントや組織コミットメントを高めることによりどんなメリットがあるのでしょうか。「ポジティブな影響としては従業員の幸せの向上、離職率の低下、パフォーマンスの向上に寄与するといった調査結果が出ています」(髙宮氏)。