メンバーを活かすリーダーに必要なこととは? 

図表② 心理的安全性を確立するために必要なリーダーの行動

出所:エイミー・C・エドモンドソン(2021)『恐れのない組織―「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』より第一生命経済研究所作成

チームの心理的安全性を高めるためにリーダーに求められる役割は3つあります(図表②)。具体的には、失敗は当たり前、発言を歓迎する、感謝を表すなどメンバーに対する前向きな姿勢が求められます。

逆にNGなのが威圧的なリーダーシップです。「威圧的なリーダーシップは短期的には生産性を向上させられますが、長期的に見ると下降してしまいます。上司に対する部下の不安反応は、脳科学的にも分析的思考や想像的洞察、問題解決能力などに影響を与えることが明らかになっています」(髙宮氏)。

心理的安全性を高める実践例としては、大規模な実証実験を行ったことでも知られるGoogleの取り組みが参考になります。Googleでは、re:Work というサイトで同社を始めとするさまざまな組織における働き方の先進事例や研究、アイデアを公開しています。「マネージャーにできる具体的な施策として、“傾聴”といわれる内容が多くリストアップされています」(髙宮氏)

傾聴とは、相手の話に耳を傾け、共感しながら理解すること。職場だけでなく、家庭や夫婦間などでも重要な姿勢です。特に家庭での心理的安全性は子どもの成長に不可欠。どんな自分でも受け入れてくれるのが家庭というコミュニティだとの安心感につながり、何事にも好奇心をもって挑戦する自信へとつながります。「家庭できちんと傾聴ができていれば、職場にも応用ができると思います」(髙宮氏)

一方、職場のチームメンバーも、上司やリーダーの指示命令をこなすだけの存在に徹するのはNGです。「4つの不安(無知、無能、邪魔、ネガティブ)」(図表③)がない環境づくりに進んで貢献していくことが必要とされます。「自ら積極的に発言する、さまざまな意見を歓迎するといった姿勢が大切です」(髙宮氏)

図表③ 心理的安全性を損ねる4つの不安

出所:厚生労働省「パワーハラスメント防止対策説明会資料」

心理的安全性というキーワードには国も注目しており、民間企業との新たな関係構築のために取り入れています。技術革新が進み世の中が目まぐるしく変わる中、従来のルールにのっとってトップダウンで規制する関係から、対話を通じた柔軟な対応への転換が必要となっているからです。

新しい世の中に対応したより良いルールメイキングにつなげるためにも、対話ができる関係性を築く土台となる心理的安全性が重要視され始めています。