契約書や遺言書、法律が関わる場面における最強の書面といわれるものに公正証書がある。その強さゆえSNSなどでは「公正証書さえ作っておけば安全」とまでいわれることもあるほどだ。だがしかし、公正証書は致命的な弱点も有している。今回は友人に起業資金として700万円貸した忍田さんの話を紹介しよう。

これで返済漏れはないと豪語する忍田さん

忍田さんには10年来の友人がいる。同じ大学出身の吉川さんだ。吉川さんは起業の夢に向けて資金集めをしており、今まさに忍田さんは彼へのお金の貸し付けについての話が決まったところだ。

だが、忍田さんには不安がある。それは吉川さんが起業に失敗した場合だ。最初から失敗を疑うわけではないが、やはり気になる部分ではある。

そこで忍田さんは先日SNSで見た「公正証書」なるものを作成しようと吉川さんに提案した。吉川さんも約束事は重要視しているようで快諾。それに当たり、事前に忍田さんから依頼を受け筆者が案文を作成、後日2人そろって公証役場にてその案文を基に公正証書を作成する運びとなった。

作成する公正証書の内容について簡単に記載すると「1年目は返済不要。2年目からは毎月10万円の返済をし、1回でも返済が滞れば一括返済することと、強制執行での差し押さえがなされることに同意する」といったようなものだ。

「これで返済がされないことはないから安心です」

忍田さんはそう安心しきったという。