また、国際金融のトリレンマというキーワードはマーケットの中ではしばしば使われるロジックで、ヘッジファンドなどはこれを応用しています。例えば、典型的なトリレンマ状態が発生していたアジア通貨危機の時は通貨と株の暴落が発生しましたが、その背景にヘッジファンドの動きがありました。

日本に対しても、今まさにヘッジファンドが仕掛けているのではないでしょうか。ドル円のチャートを見ると、3月19日、4月10日、4月15日では為替が大きく動いていますから、一般的にこの時には日米の金利差が開いているはずと考えられます。しかし、この中で注目すべきなのは3月18日から19日にかけての動きです。

この日は2円程度円安ドル高が進みましたが、3月19日はマイナス金利が解除された日であり、日本の金利はむしろ上がっています。このグラフはイールドカーブの変化と年限ごとの日米金利差を表していますが、この日はマイナス金利を解除したので、日米の金利差は縮まっています。それにもかかわらず、ドル円相場は円安ドル高に動いたのです。

イールドカーブ撤廃を決めて日銀が自由に動くのであれば、利上げを迫られる。そうすれば、株が下がります。実際、日本株は3月22日に年初来の日経平均株価がピークとなり、そこから下がり始めました。今の株式市場はこうした動きを読み取ることができます。

 

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岡崎良介氏 金融ストラテジスト

1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。