前半では、FOMCの議事要旨を読み解く上で「移民」がキーワードとして浮かび上がっていることを確認しました。移民に関するキーとなるデータも確認しましょう。

まず、就業者数に占める移民の割合を調べてみると、現在は20%弱となっています。2007年の統計開始時は15%程度でしたから、この17年間で5%ほど上昇したことになります。

 

ここで就業者数を用いているのは、雇用統計で用いられる雇用者数とは異なり、家計調査において個人の属性を詳細に把握できるからです。企業が提出する雇用統計では、性別、年齢、学歴、出身などの情報は報告されません。一方、家計調査では個人に直接尋ねることで、このような属性情報を収集することができるのです。家計調査は2007年から継続して実施されているため、一定の信頼性があるデータだと言えるでしょう。

家計調査をさらに分析してみると、労働力人口の伸びは、外国生まれの人々の方が圧倒的に高いことがわかります。コロナ禍の影響などは関係なく、10年間、5年間といった期間で見てもこの傾向は変わりません。つまり、外国生まれの人々の労働参加意欲の高さが際立っているのです。

 

就業者数に絞って見ても、この1年間で米国生まれの人が減少しているのに対し、外国生まれの人は4%も増加しています。こうしたデータから、米国の労働供給は外国生まれの人々に支えられてきたことが浮き彫りになります。

さらに分析を続けましょう。家計調査と雇用統計を組み合わせて分析すると、企業にカウントされている労働者数の伸びは、就業者数の伸びを上回っていることがわかります。この差は、一人の労働者が複数の仕事を掛け持ちしていることに起因すると考えられます。そして、そうした掛け持ちをして働く労働者の多くは、低賃金で労働意欲の高い移民であることが推測されます。

 

このように、移民の複数職就労が現在の経済を下支えしている一方で、移民の低賃金という側面がインフレ抑制に一役買っていると言えそうです。しかし移民たちは、インフレに負けまいと必死に働いているのが実情です。たとえ時間単価の低い仕事でも、掛け持ちすることで収入を増やそうとしているのでしょう。

こうした移民たちの働きぶりが、米国経済を前進させている面は確かにあります。しかしFOMCの議事要旨が示唆するように、低賃金であるがゆえのリスクも含んでいるのです。私たちはこの状況をしっかりと認識して市場と向き合っていく必要があるでしょう。