元本確保型の割合が高いことには理由があります。企業型は会社が用意してくれる年金です。そのため従業員が自ら進んで加入するものではないことから、商品を選ぶ際に「確実な元本確保型」を選んでおく誘因が働きます。その割合が低下してきたのは、継続的に投資教育をすることが企業側に求められてきたことによる社員の知識向上に加え、自分の意志で商品を選ばない場合には、運用商品が選ばれるように促す動きが増えたことによるものです。
企業型年金を運営する側からすると、社員が元本確保型だけにしておくと、将来的に多くの年金を得ることができないので心配です。たとえば、従来型の年金であれば企業が母体となった年金基金が責任を持って年率2%程度で運用していたものを、制度を切り替えて確定拠出年金にした場合に社員が運用を選択しないと、30年後に受け取る金額は30%程度の差が出ます。こういう背景から、加入者である社員には運用を行ってもらいたいという企業側の想いがあります。
ただ、確定拠出年金における運用は、加入者の自己責任なので無理強いはできません。そのため、社員向けの投資教育を通じて動機づけをしています。企業に勤めている人、特に大企業に勤めている人は、会社の健康保険組合などとともに、企業年金も当たり前の福利厚生と受け止める向きもありますが、ありがたい制度なのです。
一方でiDeCoと呼ばれる個人型の場合は、自らの意志で金融機関を通じて申し込みを行います。そうであれば、申し込んだ時点で運用商品を選びそうなものですが、現実はそうなっていません。これは、iDeCo利用の勧誘や説明において、入口での税金面のメリットを強調していることが多いためと思われます。
iDeCoの掛け金は社会保険料として課税の対象から控除されるので、その分だけ所得税、住民税が減額されます。年間数万円にもなるこのメリットを得ようとしてiDeCoに加入しているのであれば、掛け金は運用しなくても元本確保型においておけば目的は達せられます。そのため、iDeCoに加入してもわざわざ運用商品を選ばないケースが多いのです。
これに対して、NISAつみたて投資枠で選べるのは運用商品のみですから、必然的にお金はほぼ100%運用に回されます。しかも、運用において株式資産を含むこと、インデックス運用中心で分散投資が反映されたものであること、手数料は低いといった配慮がなされています。目的が明確で、その目的に適った運用商品が採用されている点がはっきりしています。
確定拠出年金においても長期投資に適している運用商品が採用されていますが、採用するのは、企業型であれば各企業の制度を運営している主体であり、個人型iDeCoでは申し込み先の金融機関が採用した商品から選ぶことになります。ここにはNISAつみたて投資枠のような、明確で一律なコンセプトや採用基準はありません。
そもそも制度が違うのですから、NISAと確定拠出年金で採用されている運用商品に単純に優劣をつけられるものではありません。ただ、今のところはNISAつみたて投資枠のほうが、より長期の資産形成を目的とした運用商品としての採用基準が明確です。
●第2回【NISAでつみたて vs iDeCo―実はあなどれない!? “制度にかかる費用”で比較】では、税制面及び費用面から「NISAでつみたて」とiDeCoの違いについて解説します(5月7日公開予定)。
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