「自分のこと」として認識してもらうことが大事

新規加入対象者の「意思決定」が必要なのは、下記の2点です。

まず一つは、掛金の配分指定です。さらに規約によっては、自ら掛金拠出をするかどうか(マッチング拠出を活用する、もしくは選択制DCへの加入)を決める必要があります。

掛金の配分指定に際しては、運用シミュレーションの提示が、判断材料として有力です。例えば、説明をする時までに、加入対象者個々人の情報を反映したWEBサイトを準備しておくと、「自分のこと」としてDC制度を意識してもらうことにもつながります。

特に新卒社員の場合、60歳まで長い時間をかけて積立投資ができます。毎月2万円ずつ38年間、3%で運用できたとすると1710万円になります。元金は912万円なので、およそ2倍です。結果が想像できれば、考えることを放棄するリスクを減らすこともできます。

シミュレーションが準備できないケースでは、過去の積立投資のグラフを表示します。ここで重要なのは、資産分散しているバランス型投資信託についても説明し、分散投資が重要であることを実感してもらうことです。

日経平均が史上最高値を更新した現在、リスクを過度にとることにもつながりかねないからです。

「活用することが基本」というスタンスで説明する

米国では、401(k)への掛金拠出をデフォルト(初期設定)とし、拠出をしたくない人のみ申し出る「オプトアウト」方式を採用できます。英国でも、NEST:国家雇用貯蓄信託: National Employment Savings Trustという名称の確定拠出年金制度では、米国401(k)同様の施策が実施されています。その結果、米英両国では確定拠出年金制度を活用する人が飛躍的に増加しました。

米英両国の施策は行動経済学の知見を生かしたもので、現状維持バイアス(制度を利用するためには新たな行動を起こす必要があり、現状維持を保とうとする状態)や、双曲割引(遠い将来の年金受取の価値を非常に低く評価するバイアス)を回避することに役立っています。

日本では「オプトアウト」方式を使うことができないため、あくまで本人の選択になります。そこで大切になるのが、伝える側の意識です。

制度を説明する事業主が「あくまで任意の制度」というスタンスでいる場合、現状維持バイアスなどにより「利用しない」という判断になりがちです。これまでの経験上、「利用することが基本」という姿勢で説明した場合には、制度の利用率が上がる傾向があります。