元・相方との再会
数日前、コンビを組んでいた時に通っていた懐かしい居酒屋で、久保田は宮田と酒を飲みながら話した。
「久保田、マジでもう1回一緒にやらないか?」
宮田の顔はビールと焼酎で赤く染まっていたが、酔った勢いで適当に言っているわけではないということはその真剣なまなざしが物語っていた。
「お前、ピンでちゃんとやれてるんだろ? いまさら俺がいても仕方ない」
「いや、やっぱりピン芸人は俺の性に合ってない。舞台に立っても、なんとなく違和感があってダメなんだ。お前といる時は、そんなことなかった」
「そうは言っても、俺にも生活があるから難しいよ」
「実は『ホプキンスが復活するなら協力するよ』っていう人が何人もいるし、意外とうまくいくと思う。ていうか、お前は本当に今の生活に満足してるの? 本当に不動産の仲介が漫才より楽しいの?」
「いや、満足してるとかそういうことじゃなくて……」
日付が変わるまで、酒を飲みながらそんな話を繰り返していた。飲みながらの話で結論が出るはずもなく、今日も久保田は不動産仲介の仕事を続けている。しかし「お笑いの世界に戻る」という選択が頭から離れることはなく、ここ最近は仕事に身が入らない日々が続いていた。