日経平均最高値更新に街の声は?

では、この最高値更新について、街の人はどう思ったでしょうか。

案の定、テレビの街頭インタビューで、「日経平均株価が最高値を更新しましたが、あなたの暮らしは楽になりましたか?」「株価が最高値を更新した実感はありますか?」といった質問をしてマイクを向けるリポーターに対し、「もう景気が良くて大変です」「もうかり過ぎて笑いが止まりません」といった回答は、ほとんど見られませんでした。

メディアは自分たちに都合の良いコメントだけを使いたがるので、それも当然かと思うのですが、インタビューに答えた人たちのコメントは、「あまり景気が良いという実感はありませんね」とか、「インフレで家計が苦しいです」といった、ネガティブな声ばかりでした。

偶然にも、日経平均株価が最高値を更新した2月22日、内閣府が「消費者マインド調査」の集計結果を公表しました。

2024年1月21日から2月20日までの期間中、男女合わせて69名に聞いたもので、半年後の暮らし向き、1年後の物価上昇についての見方を集計したものです。

それによると、半年後の暮らし向きについては、

「悪くなる」・・・・・・30.4%
「やや悪くなる」・・・・・・30.4%
「変わらない」・・・・・・26.1%
「やや良くなる」・・・・・・8.7%
「良くなる」・・・・・・4.3%

という結果が出ました。

「悪くなる」と「やや悪くなる」を合わせて60.8%ですから、多くの人が半年後の暮らし向きについて、悲観的な見方をしていることになります。それが街頭インタビューの声につながったのかどうかは定かでありませんが、恐らくあのインタビューをテレビなどで観た人たちは、少なくともポジティブな気分にはならなかったと思います。

よく経済や株価の予測をする際に、「悲観的な見通しを出しておいた方が無難」という考え方があります。

悲観的な答えをしておけば、予想が外れて良くなったとしても、良い方に外れるので、外れたことに対して批判の声は上がりにくくなりますし、当たった時には、「言った通りになりましたね」と言えます。悲観論者は常に自分の意見が間違った時に備えて、逃げ場をつくっているのです。

そう考えると、テレビが悲観的なコメントばかりを取り上げる理由が、何となくわかってきます。悲観的なコメントだけを取り上げておけば、視聴者から「皆、景気がいいと言っているけれど、俺は全然ダメだぞ」といったクレームが入る心配がないからです。