投資信託の為替ヘッジあり・なしを比較すると……

もう1つ、為替ヘッジの注意点について触れておきましょう。投資信託のなかには、同一ファンドで「為替ヘッジあり」と「為替ヘッジなし」を選択できるものがあります。

この手の投資信託を購入する際、皆さんはどちらを選びますか。

円高で為替差損が生じ、リターンが低下するのを避けたいという人は、為替ヘッジありを選ぶのかもしれません。ところが、最近の傾向として為替ヘッジありの運用成績が、為替ヘッジなしのそれに比べて低迷するケースが生じています。

おもに米国債券を組み入れて運用する投資信託で、為替ヘッジありと為替ヘッジなしの運用成績を比べると、昨年12月末時点の過去1年間の運用成績は、為替ヘッジなしが10%前後のプラスであるのに対し、為替ヘッジありはマイナスになっているものが多く見られます。「為替ヘッジありの方が安全なんじゃないの?」と思った人もいるでしょう。

「為替ヘッジされているから安心」とは言えない

昨年1年間の金融環境を振り返ると、米国では金利が上昇し、円安が進みました。

金利上昇は債券価格の下落につながるため、ファンドに組み入れられている債券の評価額は下がるのですが、為替ヘッジなしのタイプは円安に救われました。為替差益を存分に獲得できたため、運用成績が10%程度のプラスになったのです。

一方、為替ヘッジありの成績が振るわなかったのは、まさに為替ヘッジをかけていたからです。為替先物予約を行うと、前述した為替ヘッジコストがかかるのに加え、あらかじめ一定期間後の為替レートを予約してしまうため、円安が進んでも為替差益が得られないというデメリットがあります。

加えてファンドに組み入れている米国債券の評価額が、金利上昇によって下落したため、運用成績が落ち込んでしまったのです。

外貨建て金融商品で資産運用をする際には、「為替ヘッジされているから安心」などとは思わないようにしてください。

参考:大和アセットマネジメント「マーケットレター 為替ヘッジコストについて(2024年2月)」