「為替ヘッジコスト」という落とし穴

しかし、この取引にも落とし穴があります。それは、為替ヘッジコストの存在です。大和アセットマネジメントが定期的に出している「Market Letter」では、主要通貨の為替ヘッジコスト状況が公表されています。

為替ヘッジコストは、「外貨の短期金利と円の短期金利の差」と考えておけば良いでしょう。現在、日本の短期金利はゼロ近辺ですから、米国やユーロ圏など短期金利の水準が高い国・地域の通貨を、一定期間後に売るという先物予約を行うためには、その金利差分がコストとして差し引かれます。

ちなみに、3カ月後に米ドルを売るレートを、現時点で確定させた場合、年率にして6%近いコストがかかります。

ということは、仮に年6%の外貨定期預金で運用できたとしても、1年後にドルを売る時に適用されるレートは、現時点のレートに比べて6%相当、円高水準に決められてしまうため、結局のところ日本円で1年間運用したのと、ほぼ変わらない収益しか得られなくなるのです。

でも、考えてみたら当然です。もし為替ヘッジコストが全くかからず、しかも高金利がそのまま得られるとしたら、今の低金利に我慢している日本人のお金が、大挙して米ドルに流れてしまうでしょう。

それは国内から資本が流出してしまう日本にとっても、また急激に海外からお金が集まって金余り状態になってしまう米国にとっても、決して良いことではありません。急激な資本の流出入は、実体経済にも少なからぬインパクトを及ぼします。

資本流出に見舞われた国では、金融危機や深刻な景気低迷に見舞われる恐れが生じますし、逆に諸外国から多額の資本が集まった国では、それらが国内のさまざまな投資に回っているうちは良いのですが、投資先がなくなると、今度は不動産、美術品などのモノに資金が流れるようになり、それがインフレやバブルを加速させる恐れを生じさせます。

その意味では、為替ヘッジコストがあるから、世界中のお金は合理的に動いているとも言えるのかもしれません。