金融・経済への影響は僅少

金融政策修正を巡っては、金利急騰を懸念する投資家や利ザヤ回復に期待を寄せる金融機関など期待と不安が入り混じっているのが現状かと思いますが、私は金融市場や実体経済への影響は小さいのではないかと想定しています。確かに、これまで日本銀行が金利を本来の水準よりも大きく引き下げることができていたのであれば、政策修正すると当然ながら長期金利も相当跳ね上がります。しかし現状の低水準の金利は日本の経済成長力の弱さが背景にあり、単に日銀が非伝統的な政策を使って抑え込んでいたというわけではないのです。金融政策による金利押し下げ効果を過大評価すべきではないでしょう。

正常化の過程における金利の上昇幅は小さいと思います。具体的には、10年国債利回りの中長期の均衡水準は0.8%程度に、短期金利は+0.2%前後になるのではないでしょうか。潜在成長率の低下とインフレ率の上昇とが打ち消し合う形となり、ほぼ10年前の水準に戻るイメージです。

金融緩和の影響を受けて歴史的な円安となっている為替の急激な巻き戻しも懸念されていますが、円高リスクがあるときには正常化を進めないなど日銀は十分に配慮をしながら政策修正していくと思います。例えば米国で金融緩和を進めている時、あるいは金融緩和期待がある時には、日銀は金利を上げないようにするでしょう。

政策を修正するときには、金融市場や実体経済に大きな打撃にならないよう慎重に事を運ぶのが日本銀行の伝統的なスタンスです。植田総裁も従来と同様、慎重に政策修正を進めていくのではないかと思います。