「フルFIRE」はかなり難しい

では、ハードルの高い「フルFIRE」から詳しく考えていきましょう。まず、生活のために必要な額は、当然ですが世帯の人数により異なります。

参考に総務省統計局のデータを参考に計算したところ、生活費の年間平均は単身世帯で約194万円、4人世帯で約396万円です(総務省「家計調査報告 家計収支編」(2022年(令和4年)平均結果の概要)。この値をフルFIREの4%ルールに置き換えると、単身世帯は約4850万円、4人世帯は約9900万円の資産が必要となります。

ここまで説明が長くなりましたが、いよいよ本題。「この資産額を新NISAで実現できるのか?」という点について、金融庁の「資産運用シミュレーション」を使って計算します。

10年でフルFIREを目指す場合

まずは、10年でフルFIREするパターン。10年間で新NISA枠の1800万円を埋めるためには、毎月15万円の投資が必要です。

この条件でシミュレーションしたところ、単身世帯がFIREするためには利回り17.7%、4人世帯の場合は28.5%が必要という結果となりました。ちなみに、2024年1月26日時点での「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の年率リターンは、5年平均で21.70%。この数字だけ見ると、「10年かけて新NISA枠を埋めきった場合、単身世帯であればフルFIREも視野に入る」という見方もできます。

一方で、ここ数年の株式相場はかなり好調であり、今後も年20%を超えるリターンが得られる……というのは、楽観的すぎます。そこで、期間をもう少し長く取り、20年でフルFIREするパターンも見ていきましょう。

20年でフルFIREを目指す場合

20年間で新NISA枠の1800万円を埋めるのであれば、月7.5万円の投資が必要となります。この条件であれば、単身世帯がFIREするためには利回り8.8%、4人世帯の場合は14.2%が必要という結果となりました。

投資期間を長く取ることができれば、複利効果によって資産は雪だるま式に増えていく。さらに月々の投資額も少なく済むため、FIREへのハードルは10年間で枠を埋める場合より低くなります。