買収費用2兆円 増資の可能性はある?
株主にとって、買収で気になるのは増資の可能性でしょう。株式を使った資金調達は1株あたりの価値の希薄化を招くことから、一般に株価は下落します。
USスチールの買収が実現した場合、取得総額は141億2600万ドル、1ドル=145円で2兆0483億円です。日本製鉄は銀行からの借入金で対応するとしており、すでに資金の手当ては確保しているようです。ただし財務状況や市場動向などから「最適な資金調達手段を検討」するとしており、融資以外の可能性を残しています(出所:日本製鉄 USスチール買収のリリース)。
日本製鉄の財務状況を確認すると、株主資本比率はおよそ43%です(2023年9月)。これは同業他社とほぼ同じ水準です。
【日本製鉄の財務(2023年9月末)】
総資産 | 10兆6757億円 |
負債 | 5兆5009億円 |
株主資本 | 4兆6179億円 |
株主資本比率 | 43.3% |
(参考)鉄鋼業の平均自己資本比率 | 44.6% |
※鉄鋼業はプライム・スタンダード・グロースに上場する41社(2022年度)
取得費用を借入金で調達すると仮定し2兆円を単純に負債と総資産に積み上げた場合、日本製鉄の株主資本比率は7%ポイント悪化し36%となります。金融費用の増加も想定されるため利益も圧迫しそうです。
こういった影響を避けるため、増資が選択される可能性もあるでしょう。USスチールの買収が成立した場合、次は日本製鉄の資金調達が注目を集めそうです。