3. 選定したアクティブFの賢い使い方
目指すのは投資ユニバースを狭めない“選ばない”アクティブ運用
アクティブFを利用した株式投資でも、その成功確率をできる限り高めるためには、地域・国・業種あるいは投資スタイル(後述)などで投資ユニバースを狭めず、投資母集団を“選ばない”アクティブ運用を目指すべきでしょう。またお話しするアクティブFの利用事例は、確定拠出年金やNISAなど各口座単位では考えず、運用資産全体で考えることが重要です。
アクティブFの使い方を考える上でのポイントは3つです。
(1)インデックスFとの併用も検討
アクティブFとインデックスFはどちらかを選ばなくてはならない訳ではありません。事例の中で考え方をご紹介しますが、両者の良いところを生かしながら組み合わせることが賢明と思われます。また併用することにより、アクティブFにおける運用者交代などのリスクにも、ある程度は備えることができます。
(2)投資スタイル(得意分野)を知る
株式投資を行うアクティブFにおける投資スタイルとは、そのファンドが得意として主に投資する市場のセグメントを指します。代表的なものではグロース(成長株)あるいはバリュー(割安株)、もしくは規模の物差しによる大型株や小型株です。後述するように投資スタイルの違いは、運用成績に大きな影響を与えるため、そのファンドの投資スタイルを知ることが重要です。
投資スタイルは、ファンドの名称(例えば“〇〇成長株ファンド”)の中で表現されることがあります。ファンドの目論見書の中で説明されている場合もあります。また評価機関などの中には、右記のように各ファンドのスタイル分類を独自に行っている所もありますので、参考にしていただくこともできます。
(注)グロースとバリューの間の投資スタイルを”ブレンド”と呼びます。
(出所)ウエルスアドバイザー(旧モーニングスター)社の情報より株式会社お金の育て方作成
(3)投資スタイルの偏りに注意
投資スタイルの偏りは運用パフォーマンスに大きな影響を与えます。
2000年以降の日本株市場における投資スタイル間のリターン格差をグラフで表しました。スタイル間のリターン格差は大きく、グロースとバリューの間に1年で20%程度のリターン差がつくこともあります。
日本株市場:投資スタイル間の各年のリターン格差
(2000年1月以降2023年6月まで)
※図をクリックで拡大表示
(出所)野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング社が公表するデータを使用して株式会社お金の育て方が作成
こうしたスタイル間のリターン格差は、ファンドの運用力では避けられない、つまりファンド選定では対応できないにも関わらず、ファンドのパフォーマンスへ大きな影響を与えています。
下図は、この6年間の日本株ファンドの運用成績の順位の変化を、前半の3年間(グロース優位)と後半の3年間(バリュー優位)で表しています。前半3年で上位の成績をあげたファンドの多くは、優れたグロース株ファンドであったと思われますが、これらは優れたグロース株ファンドであるが故に後半の3年間では下位に低迷しています。こうした市場環境の変化による順位の変動は、運用力のある優れたアクティブFを選定するだけでは乗り切ることはできません。
日本株ファンド:前半3年間で運用成績上位のファンドの後半3年間の順位を確認
※図をクリックで拡大表示
(出所)野村総合研究所Fundmarkの情報を使用して株式会社お金の育て方作成
アクティブFの組み合わせ事例
投資スタイル間のリターン格差の影響を軽減するには、株式ポートフォリオ全体の投資スタイルが偏らないように投資することが重要です。アクティブFによる組み合わせ事例として3通りの考え方をご紹介します。
基本方針は以下の通りです。
●インデックスFとアクティブFの組み合わせも検討する
●アクティブFの中小型株での自由度を活用する
●投資スタイルが偏るリスクを回避するために、大型株では以下のいずれかの方法でアクティブFを利用
・スタイルの偏りの少ないブレンドで投資
・グロースとバリューの組み合わせで投資
アクティブFの組み合わせ投資事例
出所:株式会社お金の育て方
次回(第8回)は、本連載の最終回として、これまでお話した運用方法が、第1回に設けた投資初心者の方でも納得して実行していただける資産運用の条件に合致しているかどうかを確認します。