大型商業施設が駅前に?
それから1年がたっても、店は相変わらず順調だった。
そんなあるとき、長田さんが店にやってくる。その表情がいつもよりも暗いことが気になった。
「長田さん、どうかしたんですか? 」
「いや、実はね、駅前に商業施設が建設されるって言う話が出ているみたいなんだ」
その話を最初聞いても勇司はピンとこなかった。
完成したら、妻を連れて行こうと思ってたくらいだ。
「それがどうかしたんですか? 」
「もしそんなものができてしまったら、商店街に来ているお客さんは皆そっちに行ってしまうだろ? 」
長田さんに問いかけられ、勇司はことの重大さに気付く。
勇司がこうしてそば屋として順調なのは、競合がいないからだ。
しかし大型商業施設ともなれば、有名チェーンのそば屋が参入してもおかしくない。
いやというよりも、商店街に人が寄りつかなくなれば、そもそもうちに来てくれる人はいないはず。
商店街を利用した帰りにうちのそば屋で食事をしてくれるお客さんがほとんどなのだから。
「そ、それは阻止しましょう。まだ決定ではないんですよね? 」
「もちろんだよ。うちの連合会全員で力を合わせて反対運動をするつもりだ」