年金や貯蓄、医療費、介護費用……。年齢を重ねてなお、お金の悩みはつきないものです。そんな心配を呼び寄せる原因に、自分の貯蓄状況や将来必要なお金を「数字」で理解できていないことが挙げられると、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏が指摘します。

話題の書籍『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』では、自分を取り巻くお金の現状を把握する必要性や、その方法についてやさしく解説。今回は本書の「はじめに」、第1章「一生安心のお金の準備とは?」、第2章「日々の家計を見直そう」の一部を特別に公開します。(全3回)

●第1回:70代「貯蓄が底をつくかもしれない」と不安を抱える人がすべき“ただ1つのこと”

※本稿は、畠中雅子著『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』(高橋書店)の一部を再編集したものです。

必要なのは「年に3~6回の記帳だけ」

赤字の把握というと「家計簿をつける」と考える方もいると思います。しかし、家計簿では、口座から引き落とされるお金や配当金などのプラスのお金まで、正確に掴むのは不可能(至難の業)です。

実は、家計簿で赤字額を調べる方法以外にも、もっとラクに「1年間の赤字額」をつかむ方法があります。それは、私自身が30年近く実践してきている「貯金簿®️」を利用する方法です。

貯金簿は、預貯金や運用商品の現在額、貯蓄性のある保険の払込み済みの保険料総額などを定期的に記録するノートのこと。何年も使うため、しっかりしたB5やA4のノートに書くのがおすすめです。

貯金簿では、年に3~6回の記帳だけで、口座の出し入れを含むお金の流れのすべてを正確につかめます。家計簿よりも少ない労力で1年間の赤字をつかめるのが貯金簿のメリットです。

貯金簿の記帳間隔について、年金暮らしの方は2か月ごとが適しています。2月、4月、6月、8月、10月、12月、つまり年金の支給月に記帳するのがよいでしょう。年金を受け取る15日から月末までの間に記帳してください。

貯金簿のメリットは、1年間つけ続けなくても「年間の赤字額」がわかること。記帳した日と、その1年前の同じ日(同じ時期でもOK)の貯蓄残高を記帳して、その差額を計算すれば、1年分の赤字額がつかめるからです。

家計簿では1年間かかるものが、貯金簿を利用すれば、たった1日で「自分に必要な老後資金額」がわかるのです。

私自身は貯金簿をつけ始めてから、1年間の黒字や赤字を正確につかめています。特別支出を洗い出す必要もありません。加えて「1年間の赤字額に、90歳までに残された年数」を掛け合わせれば、この先に必要な老後資金額も簡単に計算できます。

老後の必要額を計算したら、貯金簿の最新の記帳内容を見て、自分の貯蓄額と比べてみましょう。「貯蓄額÷年間の赤字額=今の貯金が底をつくまでの年数」です。

あと数年で底をつくという方も心配しすぎることはありません。これから、住み替えも含めた生活設計の見直しをすればいいだけです。