年金や貯蓄、医療費、介護費用……。年齢を重ねてなお、お金の悩みはつきないものです。そんな心配を呼び寄せる原因に、自分の貯蓄状況や将来必要なお金を「数字」で理解できていないことが挙げられると、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏が指摘します。

話題の書籍『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』では、自分を取り巻くお金の現状を把握する必要性や、その方法についてやさしく解説。今回は本書の「はじめに」、第1章「一生安心のお金の準備とは?」、第2章「日々の家計を見直そう」の一部を特別に公開します。(全3回)

※本稿は、畠中雅子著『70歳からの人生を豊かにする お金の新常識』(高橋書店)の一部を再編集したものです。

70歳でも「老後」の心配をする時代を生き抜くために

私がファイナンシャルプランナーになって、30年が過ぎました。その間、たくさんの高齢者の方から生活設計のご相談を受けてきましたが、70歳になっても、「老後」の心配をする時代になったと実感する機会が多くなっています。

長生きは喜ばしい反面、お金の面ではリスクになるからです。

体力、気力が落ちてくるとはいえ、まだまだ自分で動ける方の多い70代。70代に入ったら、お金を増やすことは難しいので、持っている資産が「底をつかない」程度に上手に使っていく方法を考えるのが現実的です。

同時に、住まいについても考えてみましょう。70代は介護に備えていく時期でもあります。

多くの相談者の方は、「子供には迷惑をかけたくない」とおっしゃいます。ただ、なかなか準備ができないまま、結果的にお子さんたちが負担を強いられるケースも目立ちます。

制度改正によって、特別養護老人ホームが安い施設とはいえなくなっている今、自分の資産で住み替えられる施設を探しておくことは、老後破産を防ぐ確実な方法です。

70代を迎えたら、積極的に運用してお金を増やす必要はありません。これからの人生を楽しむために、やり残したことがないように、賢く上手にお金を使っていく時期だと考えましょう。