自己都合退職では「4~5割減額」のケースも
退職金が減額されたり、もらえなくなったりするケースは、会社の問題ばかりではありません。社員側の問題で退職金が減額や不支給になる場合もあります。
退職金がどんなときに、減額や不支給になるかは、会社の就業規則や退職金規程に定められています。実は、日本の会社では長い間、自己都合退職をすると退職金が減額されるのが当たり前という労働慣行が根付いています。自己都合で会社を辞めると、なんと4~5割も退職金が減額される場合もあるそうです。
ここで思い出していただきたいのが、今年6月に発表されて話題となった政府の「経済財政運営と改革の基本方針2023」(いわゆる「骨太の方針」)の中で、掲げられた「成長分野の労働移動の円滑化」です。このとき、労働者が自由に成長分野に転職しやすいように、勤続年数による優遇や自己都合退職のペナルティーを見直そうといった議論がなされました。その結果「退職所得控除の見直し」がサラリーマン増税と騒がれましたが、「勤続年数が長い人に有利」な退職所得控除の見直しは、今のところ先送りとなっています。
しかし、その陰で地味に変わっていたのは、厚生労働省のモデル就業規則です。「退職金の支給」の項目から、勤続年数の規定や、自己都合退職に関する退職金の減額規程がバッサリ削除されました。
●Before(令和3年4月版)
(退職金の支給)
第52条 勤続_年以上の労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、自己都合による退職者で、勤続_年未満の者には退職金を支給しない。また、第65条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある。
●After(令和5年7月版)
(退職金の支給)
第54条 労働者が退職し又は解雇されたときは、この章に定めるところにより退職金を支給する。ただし、第68条第2項により懲戒解雇された者は、退職金の全部または一部を支給しないことがある。
このような新しい「モデル就業規則」に沿って、会社の就業規則や退職金規程が改訂されれば、自己都合退職での退職金減額や不支給はなくなるかもしれません。