“何時でも”“選ばず”投資の効果
徹底した分散投資によるポートフォリオ効果
それでは“何時でも”“選ばず”投資すると、どのような成果が期待できるでしょうか。銘柄間の事業価値の増加スピードの差と株価水準の差がそれぞれ圧縮され、株式投資のリターンが全銘柄の平均的な株主利益率(ROE)に近づくのではないでしょうか。
前回お示しした世界株指数の例で見てみましょう。
“何時でも”“選ばず”株式投資する事例の一つは、世界株指数に採用されている全銘柄にできるだけ長期で投資することでしょう。以下のグラフでは、前回のグラフ(リンク)に、世界株指数へ2001年1月から2022年12月まで休まず投資した場合の平均リターンを加えています。
全期間平均の世界株指数のROEは年率10.9%でしたが、世界株価指数の平均リターンは年率9.0%でした。“何時でも”“選ばず”株式投資を行った投資成果は、投資対象銘柄の平均ROEに近い水準となっています。
世界株指数採用銘柄 :平均ROEと株価指数のリターン及びBBB格社債利回り(注5)
(注5)MSCI World指数に関してMSCIが公表するデータから株式会社お金の育て方が算出。各暦年年末現在。世界株式リターンは税引き後配当込の円換算データで計算。BBB格世界社債はBloomberg Barclaysグローバル総合社債(Baa格)を使用。運用コストやその他税金は考慮せず。
初心者でも実行可能な“攻めの”分散投資による成果
“何時でも“”選ばず“投資は、受け身の投資戦略のようではありますが、実は初心者でも誰でも実行可能な「積極的」な「攻め」の投資戦略でもあります。
理由はポートフォリオの効果です。
図を使ってご説明します。
分散投資によるポートフォリオの効果:「攻めの」分散投資
出所:株式会社お金の育て方
異なる動きをする資産に分散投資する結果得られる投資成果は、リターンは加重平均ですが、リスクは分散効果で低水準になります。
ところがリターンではなく、リスク調整後(リスクあたりの)リターンで順位づけをすると、ポートフォリオの投資成果は中央値よりは上位になります。
今後のリターンを予想して選別投資することが難しい場合、最初から市場指数通りに分散投資を行うことで、常に上位の成績を確保することも賢明な投資判断と考えられます。
さらに実際のデータを使って検証してみましょう。
世界株指数とそれを構成する23カ国の株価指数の30年間のデータからそれぞれの年率リターンとリスクをグラフ化しました。世界株指数は「WORLD」で示しています(下左)。
「WORLD」は縦軸のリターンでは平均的な水準ですが、横軸のリスクでは大きく左に寄っています。ポートフォリオの効果により、平均的なリターンの水準をより低いリスク水準で達成していることがわかります。
そこで今度は「WORLD」と各国の指数を、リスクあたりのリターン(年率リターン/リスク)の水準でランク付けしてみます(下右)。
「WORLD」は4位と上位にランクされます。
23カ国のうちどこに投資するのがよいか予想して選別投資すると、予想の当たり外れによりバラツキが大きい投資成果となります。一方で最初から予想せず全体に投資すれば、平均的なリターンをより小さいリスクで達成でき、リスクあたりのリターンでは上位の成績を上げています。
“何時でも”“選ばない”受け身的な投資戦略が、上位の運用成績に繋がったことになります。
世界株指数と採用国別指数(1991年12月末〜2022年12月末)
※図をクリックで拡大表示
(注)1991年12月末から2022年12月末までの30年間のMSCI World Indexとその構成国指数の月次リターン(円換算)データを使用して計算。Israelは、指数の計算が開始された2000年12月末から。
(出所)MSCIの公表データを利用し株式会社お金の育て方が計算
上記のような“何時でも”“選ばない”投資は、投資信託を使うと容易に実行できます。
次回はそのメリットと実行方法について考えます。