給料をもらう主体を変えるスモールビジネス

それでは、このような人生の歩き方を実現するためには、どうすればいいでしょうか。

自分の会社を立ち上げればいいのでしょうか。
脱サラをして、起業すればいいのでしょうか。

起業の志を持つことは悪いことではありません。リスクはありますが、起業後に会社の規模を拡大して大成功する人がいるのは事実ですから、それを否定する必要はありません。

しかし、コツコツ型を自認する私が提案するのは、もう少しローリスクの方法です。

あなたが今、会社員なら、そこを足場にして、スモールビジネスを目指しましょう。この場合のスモールビジネスとは、個人事業主やフリーランスなど、個人で行える範囲の事業を指す言葉です。

そして、できれば、まとまった資金や従業員を必要としない「ひとり企業」を目指してください。

このスモールビジネスのメリットは、たくさんあります。

・生活スタイルに合わせて仕事ができる
・自分の裁量で仕事の種類を決められる
・人間関係のトラブルに巻き込まれにくい
・少ない資金でスタートできる
・変更や軌道修正がすばやくできる
・引退の時期を自分で決められる

しかも、このスモールビジネスは、最もリスクの少ない自分のタイミングで実行できます。

「まだスタートできない」と判断したら、会社の中で独立できるような立場を目指せばいいのです。「何かをやりながら片手間でできるほどビジネスは甘くない」と主張する人もいますが、それは副業の話だと思います。

今回、提案するスモールビジネスは、現在の仕事に縛られず、自由に働き方のスタイルを変えていくというものです。本業と並行して、「自分ができそうなこと」を探し、芽が出たら、それを育てて伸ばしていけばいい、と考えてください。

ただし、スモールビジネスは脱・定年時代の歩き方を実現するためのひとつの手段です。「絶対にスモールビジネスを成功させなければならない」と考えないでください。

「できそうなときにやってみる」と気楽にかまえるだけで十分なのです。

●第3回(お金、人間関係……尽きない「老後の悩み」と向き合うとき絶対してはいけないこと)では、定年後の悩みに対するマインドや対処について解説します。

『脱 定年時代の歩き方』

発行所:Gakken
定価:1,760円(税込)

横手彰太
老後問題解決コンサルタント、家族信託エキスパート

1972年生まれ、中央大学経済学部卒。ABCマート、ニセコで飲食店経営、不動産会社の日本財託を経て、現在は、スタートアップのファミトラにて家族信託エキスパートとして従事。著書に『認知症になる前に知っておきたいお金の話』(ダイヤモンド社)、『老後の年表』(かんき出版)、『頭語の心配まるごと解決ノート』(宝島社)、『脱 定年時代の歩き方』(Gakken)がある。