自分で決める人になることで「脱・定年」を実現する
不確実性の時代を言い換えるなら、「正解がない時代」でしょうか。
この20年で働き方は大きく変わりました。職場の人間関係も、生き方に対する価値観も変化し、隔世の感があります。
「昔はよかった」と懐かしむ気持ちはありません(個人的には、今のほうがよいと感じています)。良い悪いではなく、私が30代のころと50代の今を比べると、働く環境が変化したことは事実です。
日本の企業は従来から、会社依存型(メンバーシップ型)と呼ばれる雇用形態を長年採用してきました。特定の会社にぴったりの人材を社内で育成するこの方法は、年功序列・終身雇用と相性のよい制度で、日本の高度成長期を支えてきました。
一方、スタートアップなどを中心に広がりつつあるジョブ型雇用は、仕事の内容を基準に人を割り当てる雇用形態です。
アメリカ式のジョブ型雇用では、必要な仕事に応じて社内外からスペシャリストを採用するため、職能さえあれば、年齢に関係なく高給を得られる可能性があります。
日本は解雇規制が厳しいため、ジョブ型雇用がなかなか浸透しにくい一面もありますが、少しずつそちらにシフトしているのは事実でしょう。ジョブ型雇用は、本来ドライな成果主義であるのも事実ですが、そこに、過去の経験や実績を加味した日本独自のジョブ型雇用のスタイルが生まれる可能性もあります。
問題の本質は、会社依存型かジョブ型かを選択するところにはありません。日本人の場合は「定年制」という枠組みから自由になることのほうが、ずっと大切だと思います。
現在の日本では、会社の規模にかかわらず、勤務延長制度や再雇用制度を採用する企業が年々増えています。
勤務延長制度とは、定年の年齢を60歳のまま据え置きにしつつ、定年後も退職させることなく雇用契約を延長する仕組みです。
一方、再雇用制度は、60歳に到達した時点で一旦定年退職させたあと、改めて再雇用の契約を結び、期間を決めて契約を更新する制度です。こちらは、雇用形態の変更とともに人件費を低く抑えることができるため、企業側に大きなメリットがあります。
どちらも、高齢化する日本社会に合わせて、働く期間の延長を目指す制度ですが、従来の定年制から大きくはみ出すものではありません。
そもそも、定年制は、企業が定める年齢に到達した際に一律で雇用を終了する仕組みで、明治時代にスタートしました。当初は「55歳」が定年でしたが、1986年に法律の改正があり、その後、定年60歳が定着しました。
さらにその後、2012年の改正で原則65歳まで雇用することが定められ、2025年4月からは、すべての企業に「65歳への定年の引き上げ」「定年制廃止」「65歳までの継続雇用制度」のいずれかが義務づけられます。
65歳以降も働けるのは嬉しいことでしょうか。それとも、65歳以降も働き続けるのは辛いことでしょうか。
私が提案したいのは、日本企業の現況がどうであれ、以下の3つができる人になることです。
・どんな老後を過ごすかを自分で決める
・いつまで働くかを自分で決める
・どんな仕事をやるかを自分で決める
「会社から仕事をもらう」ではなく、自分が得意な仕事を会社に提供する。「会社に働かせてもらう」ではなく、自分が働きたくなくなるまで働く。「認知症や老後資金や親の介護を心配しながら生きる」のではなく、自分の老後を充実させる方法を自分で見つける。
それらをすべて実現するのが、「脱・定年時代」の歩き方です。