国の保険でカバーされない部分を補完するのが民間保険

万が一の経済的な損失に備えるための保険は、「国の保険」と「民間保険」の2種類があります。国の保険とは公的保険、健康保険や介護保険、年金や雇用保険といったものです。この2つはいずれも同じ保険ですが、それぞれ役割が異なります。

いつでもメインとなるのは国の保険です。国の保険は、日本に住むすべての人が加入していますが、万が一の際の受取額は年金加入歴によって異なるので注意が必要です。そもそもの役割は「防貧」といって貧しくならないようにすること、がコンセプトなので、それだけでは求める保障には足りないというケースがあります。

そのような不足する保障を補完するのが民間保険の役割です。万が一の保障を考える時は、まず国の保険でどの程度カバーされるのかを確認し、それでも不足する部分を民間保険で補うという順番を忘れないでおきましょう。

病気やけがで働けない場合に備える時は、収入の減少と医療費負担の増加にいかに備えるかを考えます。収入の減少に備える国の保険は健康保険の傷病手当金です。会社員の場合、給与の約3分の2が1年半保障されます。ただし、傷病手当金は被用者保険のみの給付ですから、扶養されている方や国民健康保険の加入者には給付がありません。

医療費の負担の増加に備えるためには、健康保険の高額療養費について確認します。これは健康保険適用の医療サービスを受けた場合の1カ月に支払う医療費の上限です。この金額は収入によって異なりますし、組合健保に加入している場合は付加給付がえられることもあります。

国の保険で、収入がどの程度カバーされるのか、医療費の負担をいくらまでしなければいけないのかが分かったら、そのマイナスをいかにカバーするのか対策をたてます。その一つの方法が民間の医療保険です。

さらに病気療養が長くなったり、障害が残ったりした際は障害年金が支給されます。こちらも初診日時点の加入していた年金の種類によって、金額が異なりますので確認してください。

家族が亡くなった時に備える時もまず国の保険を確認します。この場合は、遺族年金です。遺族年金は国民年金から遺族基礎年金、厚生年金から遺族厚生年金が支給されます。遺族基礎年金は原則18歳以下の子どもが残された場合に支給され、遺族厚生年金は主に配偶者に終身で支給されます。

この金額は、亡くなった方の年金加入歴等で計算がされます。確認するためには、年金事務所やファイナンシャルプランナーに「ねんきん定期便」を持参して試算してもらいましょう。

万が一家族が今、亡くなったらという前提で、遺族年金は100万円おりることが分かったとしましょう。次は、この遺族年金で遺族の暮らしがまかなえるのかを考えます。例えば年間200万円不足するのであればそれが民間の生命保険の目安です。

遺族年金の額は、時間を追うごとに変化します。同様に遺族が必要する金額も変化します。従って民間保険を考える場合は、ライフプランも複数試算した上で選ぶと良いでしょう。また国の保険である遺族年金は、働き方によっても金額が異なります。会社員が亡くなると加入していた厚生年金から配偶者に対し終身で遺族厚生年金が支給されますが、会社を辞めたあとの死亡の場合は、一定の条件を満たさない限り遺族厚生年金は支給されません。

また遺族年金は男女で給付が異なるので、特に共働きの方は、しっかりと我が家の万が一における国の保険を理解し、不足のないよう民間保険も準備しましょう。

さらに高齢期における保障として、年金生活になった後の万が一の備えも考えましょう。それぞれが受け取っていた老齢基礎年金は、対象の人が亡くなるとそのまま消滅してしまいますが、遺族厚生年金は状況によって、配偶者に支給されます。

長生きに備える時もまずは国の保険からチェックします。老齢年金は、過去分の年金加入歴における老齢年金額はねんきん定期便で確認が可能ですが、その金額がそのまま65歳以降の老齢年金になるわけではありません。

この金額は、これからの働き方により金額が異なるので、やはり年金事務所やファイナンシャルプランナーに相談して試算してもらいます。そしてその上で不足すると感じた金額をiDeCoやNISA、あるいは個人年金保険等の金融商品を使い用意します。

以上のように、年金には老齢年金の他、障害年金と遺族年金と給付があります。年金を貯蓄だと思って、いくら払っていくらもらうと誤解してしまうと、損得勘定で判断してしまいます。しかし本来年金は保険なので、その本質を理解し自分の生活に活用していただきたいと考えます。