退院がかないそうだが、問題が…

ある日見舞いに行くと、病棟の看護師から、退院計画についての話がありました。どうも他に入院を待っている人がいるため、できるだけ早く退院をしてほしいようです。

とはいえ、今の父の状態で――つまり事故前のような歩行は難しい状態で、そのまま家に帰れるとは思えません。家は古い戸建てで、玄関の段差は大きく、トイレや風呂に手すりがありません。父の書斎は急な階段を上った2階です。そこに父が収集した歴史の書籍が大量にあるのです。父は普段ほぼ書斎で過ごしているのですが、トイレは1階にしかありませんし、これまでのような生活は難しいように思われます。

大輔さんが少しパニックになってそのようなことをまくしたてると、看護師からは退院調整室で相談してはどうかと勧められました。

幸い、その日のうちに退院調整室での相談ができることになりました。ソーシャルワーカーからは、介護保険の申請を勧められ、入院中に手続きを始めることになりました。入院時にある程度調べておいたので、ケアマネジャーが重要な相談相手であることは分かっています。市役所か、地域包括支援センターに行けばリストがあるらしいので、もらいに行かねばなりません。

病室に戻り、退院できそうだと話すと父はうれしそうです。ですが、要介護認定や手すりをつけること、部屋を1階に移すことなどを提案すると途端に不機嫌になってしまいました。「まだそのようなものの世話になる必要はない!」、そして「これまでのように2階での生活をすることがリハビリになる」と言い張るのです。

すっかり疲れてしまい、大輔さんはその日はそのまま帰宅しました。

 

●そんな大輔さんにとって、“この先”の大きな支えとなる情報を会社で発見……! そして、父の入院を通じて、大輔さんがふと思ったことは?  後編【「自分が要介護になったら誰が手続きを?」50代独身男性の複雑な胸中】にて、お届けします。