果たして「貯蓄から投資へ」は実現されるのか
ところで、9月20日に日本銀行が公表した「2023年第2四半期の資金循環」によると、家計の金融資産の総額は過去最高を更新して、2115兆円になりました。ちなみに、家計の金融資産で最も大きな比率を占める現金・預金は1117兆円で、全体に占める比率は52.8%でした。
また現金・預金の残高について前年との増減率を見ると、新型コロナウイルス関連の給付金が出た2020年第2四半期から2021年第2四半期までは、4~5%増という高い増加率だったのが徐々に落ち着き、2023年第2四半期は1.4%増となっています。
これからの注目点は、現金・預金が徐々に減る一方、投資信託や株式の比率が向上するかどうかでしょう。政府が「貯蓄から投資へ」を掲げたのが2001年でしたが、それから22年が経過してもなお、家計の金融商品全体に占める現金・預金の比率は50%を超えて推移しています。
現状、消費者物価指数は上昇が続いており、8月における生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数の前年同月比は4.3%の上昇です。対して預金の利率は0.002%程度しかなく、実質的な金利はマイナスの状態です。
それに加えて来年1月からの新NISAで、非課税投資枠は大幅に拡充されます。これだけの環境がそろっておきながら、仮に来年以降も現金・預金の比率が下がらず、株式や投資信託の比率がほとんど上向かない状態が続いたとしたら、日本人の資産運用に対する保守的な考え方は、相当、強固なものと考えざるを得ないでしょう。