「家をもらったじゃないか!」「介護までしたのに!」口論で泥沼

冒頭でご説明した通り、相続財産としての不動産を評価するための方法は、誰でも分かりやすく公平に出せるように、公的価格で明確にルールが決まっています。ただし、実際に相続した不動産の本当の価値は、公正な市場で売却してみなければ分かりません。Kさんのご実家は、きょうだいで話し合った時に、相続税路線価と固定死産税評価額で出した税務上の時価を基に相続されました。その数字を見て、実際の不動産の価値としても妥当な数字だとKさんは思っていました。しかし、姉は「妹が相続した実家は、本当はもっと高く売れるので不公平だ」と言い始めました。

姉の夫は知り合いの不動産会社にその話をしたらしく、「いや、実はその周辺の土地は最近急激に値上がりしていて土地と家で1億はくだらないらしい。自分たちは一部を現金でもらわないと割にあわない」と騒ぎ出す始末です。それを聞いた弟は「しっかり話し合って決めたはずなのに、今さらなんだよ」と不機嫌です。

妹は妹で、「私は母を介護した、あなたたちは何もしていないくせに!」とヒステリックに反論し始めました。介護といっても、通いで時々様子を見ていただけで、ほぼ毎日依頼していたヘルパーの料金はKさんが全額負担しています。お金をめぐって、それぞれの配偶者も巻き込んだ騒ぎに、Kさんはあきれてしまいました。

「こんなことなら母には早く施設に移ってもらい、実家はさっさと処分しておくんだった……」。Kさんは頭を抱えました。