2023年1月、岸田首相が年頭会見で検討を表明した「異次元の少子化対策」。その中で、岸田首相は「少子化問題は待ったなしの課題」であり「将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していく」考えを示しました。今後、さらなる財政拡大が予測されます。

話題の書籍『教養としての財政問題』では、膨張傾向にある財政や社会保障制度の立て直しや経済を成長軌道に乗せる前途について、経済企画庁(現内閣府)勤務経験をもつ島澤諭氏が解説。今回は、本書第1章「財政破綻しなくても財政再建が必要な理由」の一部を特別に公開します。(全3回)

●第1回:このバラマキのツケは若者世代に…日本の財政の「膨張」が止まらない実態

※本稿は、島澤諭著『教養としての財政問題』(ウェッジブックス)の一部を再編集したものです。

「風が吹けば桶屋が儲かる」カラクリ

ではなぜ、予算の膨張が続くのだろうか?

読者の皆さんは「風が吹けば桶屋が儲かる」という諺を御存じだろう。風が吹けば砂塵が舞って、砂塵が目に入ったため目が悪くなる人が増え、そのため三味線弾きで生計を立てる人が増えるので三味線が売れる。三味線には猫の皮を使うためあちこちで猫が捕まえられてしまい、ネズミが増殖し、増えたネズミによって桶がかじられてしまう。そこで、桶の買い替え需要が生じ、したがって、桶屋が儲かるという内容だ。

予算(政府支出と呼び変えても構わない)については、乗数効果が働くことが知られている。例えば、予算を1兆円増やすと、1兆円以上の国内総生産が生み出されるというのが、乗数効果の意味するところである。では、どのようなメカニズムでこのようなことが起きるのだろうか。

理屈は簡単だ。政府が1兆円使うと、それと同額だけGDPが生まれることになる。政府に財を売却した企業は、その見返りに対価1兆円を政府から受け取ることになる。そしてその企業で働いている従業員は、政府に財を納入するために働いて得たお金で、スマホを買い替えたり、レストランで食事をしたりするだろう。

こうした金額は消費として新たにGDPに付け加えられる。さらに、スマホの販売会社やレストランの従業員の給料も増えることになり、彼らもどこかで買い物をするはずだ。

このように、1兆円の政府支出の増加は、GDPを直接的に1兆円増やすだけではなく、間接的にもGDPを増やすことになるので、直接・間接の効果を含めればトータルで1兆円以上GDPを増やすことになる。

要するに、政府が使うお金を増やすと、風が吹いたかの如く、経済のあちこちに支出と購買の連鎖反応が起きて、結果的にGDPが増える。