もはやバラマキでも税収増をもたらさない状態

一方で、バラマキだろうとなんだろうと予算を増やせば景気が回復してその分税収も増えるから、問題はないという立場もある。しかし、乗数効果をもってしても、他の条件が一定ならば、予算の増加額を上回る税収増をもたらすことはない。

もし、政府が追加的に使った金額以上に税収が増え続けるのであれば、財政再建など随分前に終了しているはずだ。現実は異なる。

しかも、日本の場合、財政赤字のうち、景気変動による財政赤字(循環的財政赤字)よりも構造的な財政赤字(構造的財政赤字)が圧倒的に大きいのが現状であり ※2、財政や社会保障の歳出・歳入構造の改革なくして、景気が少しばかり良くなったからといって、財政赤字が自然に解消されることはあり得ない。

※2 IMF(国際通貨基金)「World Economic Outlook Database」(2022年10月)によれば、循環的財政赤字▲0.5%であるのに対して、構造的財政赤字▲7.3%と推計している。

確かに、今般のコロナ禍のような緊急事態には、機動的な財政運営が必要なのだとしても、危機が去った後もなおエンジンをフルスロットルでふかしバラマキ続ければ、いずれガス欠に直面することになるかもしれないし、場合によってはエンジン自体が破損してしまうかもしれない。

しかも、そのツケを負わされるのは、私たちの子や孫であることも肝に銘じておきたい。

●第3回(インフレや経済成長では力不足…低金利の今、国の「財政健全化」を進めるべき理由)では、債務残高対名目GDP比急増の原因や日本の財政再建への道筋について解説します。

『教養としての財政問題』

島澤諭 
発行所 ウェッジブックス
定価 1,980円(税込)