日本人は昔から「一所懸命に貯蓄をする人たち」と言われてきました。昔といっても戦後くらいからだと思うのですが、一所懸命に働いて、得た賃金を節約しながら大事に使い、何とか残したお金を貯蓄に回し……。このようなイメージを、日本人に対して強く持っている世代も、まだまだ多いのではないでしょうか。

日本人の個人金融資産は過去最高に

確かに、6月27日に発表された日銀の「資金循環統計(速報)」でも、個人金融資産の額は2043兆円となり、過去最高を更新しました。過去最高を更新しているくらいですから、相変わらず日本人の貯蓄好きは変わりないと思われるかもしれません。

ただ、個人金融資産を絶対値で見れば、年々増加して過去最高を更新しているのかもしれませんが、それだけではなかなか本当の実態は見えてきません。

家計貯蓄率にも注目を!

貯蓄の一方には消費があります。毎月の収入から税金・社会保険料などの支払いを差し引いた残りの所得を「家計可処分所得」と言います。ここから最終的に消費に回した支出額である「家計最終消費支出」を差し引き、残った黒字額が、可処分所得のうち何パーセントを占めているのかを率にしたのが、「家計貯蓄率」です。

言い方を変えると、私たちが得ている月々の収入のうち、国や自治体に納めている各種税金や社会保険料を除いた、いわゆる自分たちの好きなように使えるお金に対して、黒字がどの程度を占めているのかを示しているのです。

したがって、家計最終消費支出がかさんで、家計可処分所得を上回るようなことがあると、貯蓄率はマイナスに転じます。「今月、ちょっと使い過ぎて赤字になっちゃった」というのが、まさにこの状態です。

もちろん、Aさんの家の家計が赤字でも、Bさんの家は黒字かもしれません。そこは各家庭の事情があります。それらを全国民的に把握したものが、「家計貯蓄率」になります。