家計貯蓄率は現在までにどう変化してきた?
では、貯蓄好きな日本人の貯蓄率は現在、どうなっているでしょうか。先日、家計貯蓄率の年度推移が発表されていたので(内閣府「家計可処分所得・家計貯蓄率四半期別速報(参考系列)」)、それを中心にして過去の推移を見てみましょう。まず、2022年度の家計貯蓄率は、2.6%でした。この数字が高いのか、それとも低いのかを判断するためには、過去にさかのぼった時系列の数字が必要です。
1994~2004年:バブル崩壊後から平成不況まで
日本のバブル経済が崩壊した1994年度。この時の貯蓄率は12.1%もありました。同年度の家計可処分所得が299.9兆円、家計最終消費支出が266.3兆円なので、所得に対して支出が少なかったとも言えます。
ところがその後、家計可処分所得は1997年に312.1兆円まで増加したものの、2003年には288.9兆円まで減少しました。言うまでもなく平成不況の影響でしょう。しかし、この間も家計最終消費支出は増加傾向をたどりました。結果、家計貯蓄率は低下の一途をたどり、2004年には2.1%という水準をつけました。
2013~2020年:消費増税実施からパンデミックまで
かつてこの家計貯蓄率がマイナスになったこともあります。2013年度の▲1.0%と、2014年度の▲0.8%がそれです。
家計可処分所得が2013年度は289.9兆円、2014年度は289.3兆円というように、傾向としては下がっている一方、家計最終消費支出が2013年度は291.8兆円、2014年度は291.2兆円というように逆転したからです。しかも、2013年度の家計最終消費支出は、その前年度の282.6兆円に比べて大きく増加しました。
なぜ急激に家計最終消費支出が増えたのかというと、2014年4月に実施された消費増税に伴って、駆け込み消費が起こったからです。
その後、貯蓄率は徐々に回復していき、2020年度には12.1%まで急上昇しました。この理由は、恐らく皆さんも想像がつくと思いますが、新型コロナウイルスの感染拡大によって緊急事態宣言が発出され、各種給付金・助成金が支払われたからです。
これによって家計可処分所得が大きく膨らむ一方、多くの過程は先行き不安から消費を大幅に絞り込みました。結果、家計可処分所得が319.4兆円まで急増する一方、家計最終消費支出は280兆円まで急減し、家計の黒字額が大きく膨らんだのです。
2022年度:行動制限が撤廃され、物価上昇した現在
現在の貯蓄率はどうかというと、前述したように2022年度が2.6%でした。
家計可処分所得と家計最終消費支出を見ると、家計可処分所得はコロナ禍による特殊要因がなくなったものの、コロナ前の水準を着実に上回っています。ちなみにコロナ禍前の水準は、2018年度が302.7兆円、2019年度が308.3兆円で、2022年度は313.4兆円でした。
一方、家計最終消費支出は、2020年度の280兆円から大きく跳ね上がり、2022年度は304.2兆円となっています。この額は1994年度以降で過去最高水準ですし、2018年度の298兆円、2019年度の296.5兆円に比べても増加しています。
このように、家計最終消費支出が伸びている背景としては、新型コロナウイルスがひとまず5類にダウングレードされ、緊急事態宣言や蔓延防止などの行動制限が無くなったことや、昨今の物価上昇による影響もあると考えられます。
こうして時系列で家計貯蓄率の推移を見ると、消費増税やパンデミックなどの特殊要因を除けば、2022年度の2.6%は、過去20年間における平均値と考えて良いでしょう。