累増する国債残高

図1-3:政府債務残高対名目GDP比(%)の推移(出所)財務省資料により著者作成

一般会計歳出と税収のこれまでの推移を見ると、歳出が税収を上回って推移しており、一貫して財政赤字が発生している。財政赤字は経済成長を続ける経済にあっては合理的である。

なぜなら、将来のGDPが現在よりも増加することが見込めるのであれば、将来の経済成長による所得増加分を担保に財政赤字という「借金」で現在の歳出に必要な財源の一部を賄えば、現在と将来の歳出の水準を平準化できるからである。

逆に、将来のGDPが現在よりも低下することが見込まれるのであれば、財政赤字という「借金」ではなく、将来の財源減少に備えて財政黒字という「貯蓄」をし、将来の支出に備えるのが合理的となる。

バブル崩壊以降の日本経済はそれ以前の高度成長はもとより安定成長径路からも大きく外れ、2010年以降の平均経済成長率は名目0.7%、実質0.6%となるなど、近年の日本経済は低迷を続けている。

つまり、現代の日本は、かつてのような高い経済成長が見込めないため、緊急事態への対応により発生した財政赤字という「借金」を経済成長による税の自然増収で「返済」するのが非常に困難な状況に陥っている。

この結果、図1-3のように、国の債務は累増し、日本財政の持続可能性が危惧される事態となっている。

●第2回(補正予算はもはや“年中行事”化…政府が「バラマキ」を続ける根本的な要因)では、GDPが増える仕組みや自然に解消されることは少ない赤字の種類について解説します。

『教養としての財政問題』

島澤諭 
発行所 ウェッジブックス
定価 1,980円(税込)