2023年1月、岸田首相が年頭会見で検討を表明した「異次元の少子化対策」。その中で、岸田首相は「少子化問題は待ったなしの課題」であり「将来的なこども予算倍増に向けた大枠を提示していく」考えを示しました。今後、さらなる財政拡大が予測されます。
話題の書籍『教養としての財政問題』では、膨張傾向にある財政や社会保障制度の立て直しや経済を成長軌道に乗せる前途について、経済企画庁(現内閣府)勤務経験をもつ島澤諭氏が解説。今回は、本書第1章「財政破綻しなくても財政再建が必要な理由」の一部を特別に公開します。(全3回)
※本稿は、島澤諭著『教養としての財政問題』(ウェッジブックス)の一部を再編集したものです。
膨張を続ける日本の財政
日本では財政の膨張が止まらない。その原因は、政治によるバラマキにある。もちろん、政治のバラマキはそれを是とする国民の側にも原因がある。バラマキは財政破綻確率を高め、バラマキのツケという貧乏くじを若者世代に押し付ける。
新型コロナ禍に対処すると称して、2020年度以降、予算の膨張が止まらない。2020年度147.6兆円、2021年度142.6兆円、2022年度139.2兆円、2023年度当初予算114.4兆円と、前年度補正後予算から25兆円削減されたものの、2019年度から5年連続で100兆円を超えるなど、11年連続で過去最大を更新した。
11年連続過去最大の予算ということは、コロナ禍や景気循環には関係なく、政府の規模が膨張しているということだ。このように、日本財政は、未曽有の規模で肥大化している。
日本ではこれまでも当初予算では厳しめに予算編成を行い、財政規律を守っているようには見せるものの、年度途中に政治の求めに応じて補正予算を組むことで事後的に歳出を増やし、結果として財政規律を危うくしてきた前科がある点には留意が必要である。
実際、現在の日本経済は、景気回復途上にはあるものの、未だコロナ禍の影響からは完全に脱しきれておらず、また最近の資源価格高・円安・物価高の悪影響も考慮すれば、これまで通り年度途中で繰り返し補正予算が編成される可能性が高い。
結局のところ、たとえ当初予算を抑制気味にしたとしても、やはり2023年度もこれまで同様日本財政は拡張するリスクが高い。※1
※1 令和4年度当初予算は107.6兆円と前年度補正後予算142.6兆円から35兆円減じた抑制気味の予算規模であったが、補正予算が編成された結果、補正後の予算規模は139.2兆円と令和4年度当初予算から32兆円膨張し、前年度補正後予算からは3兆円の小幅な縮小にとどまった。