これからの資産運用は、保守的な考え方のアップデートから
では、平成になってから資産運用に関して画期的な手法が生まれなかったのかというと、そのようなことはありません。
政府も「貯蓄から投資へ」の旗振りを続け、何とかして貯めこまれている資金を投資に回そうと、いろいろな政策を打ち出しました。99年には株式売買委託手数料が完全自由化され、DXの動きと相まってネット証券での取引が急速に普及しました。
個人投資家向けにインターネットを利用したFX(外国為替証拠金取引)サービスが開始されたのが翌2000年です。また、最初の分散型暗号資産であるビットコインは09年から使用が開始されています。さらに14年には、NISA(少額投資非課税制度)が始まっています。
こうした動きに呼応して、一部に前向きな資産運用に乗り出す人々も現れ始めましたが、大きなうねりとはならず、多くの人が依然としてペイオフの範囲内で郵便貯金や銀行預金を選択するなど、保守的な投資スタンスを保っています。
しかし、これだけグローバル化が進んだ社会では、「日本だけ何も変わらず、旧来の手法を維持していれば資産が守れる」などということはあり得ません。今は世界がつながっていて、資金移動も原則として自由にできるのですから、常に外国の動向に左右されることは避けられません。
このことは、08年に米国の証券会社リーマン・ブラザーズの破綻を契機に、ドミノ倒しのように危機が短期間に世界中に伝播した、リーマン・ショックの経験からも明らかです。
こうした点を踏まえると、今までのように「動かないでいること」が安全でベストの選択だという考え方をまず捨てる必要があるでしょう。
●第4回(「資産運用ってお金持ちのもの」という考えはNG! むしろ“普通の人”にこそ必須なワケ)では、資産運用=富裕層のものという誤解を解きながら、なぜこの先、投資や資産運用の必要性が高まっているかについて解説します。
『「新しい資本主義」の教科書』
池田健三郎 著
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