リスク軽減型投資信託の問題点
まず、オプション取引などを組み合わせてリスク軽減を図っている、リスク軽減型投資信託ですが、これは全く投資する意味がありません。
リスク軽減型投資信託とは、たとえば今の日経平均株価が3万4000円だとして、3年後の価格判定期間中に2万9000円にタッチしなければ元本が確保されます、といった仕組みを取り入れた投資信託です。一方、基準価額が1万1000円になった時点で保有資産を全部債券に組み換えることにより、基準価額が下がらないようにする、といった特徴も併せ持っています。
ただ、これを冷静に考えると、リターンは10%で打ち止め。一方でリスクは無限大、ということになります。なぜなら、日経平均株価が瞬間でも2万9000円にタッチしたら、その時点で元本確保の特約が失われ、あとはマーケットの値動きに応じて、償還時の基準価額が決まるからです。つまり、あとは野となれ山となれということです。
仮に、日経平均株価が2万9000円をさらに下回り、2万8000円、2万7000円というように下がっていったら、リスクだけがどんどん増大します。リスク軽減型投資信託のリスクが軽減されるのは、あくまでも日経平均株価などの対象資産が、一定水準まで下がらないことが前提になるのです。
バランス型投資信託の問題点
バランス型ファンドも、一見すると非常に便利な商品であるように見えるのですが、これをポートフォリオに組み入れる意味が曖昧という問題点があります。
大半の人は、リスク資産のみで資産を保有することはないでしょう。どれだけリスクラバーな人でも、一定額は預貯金で保有しているはずです。そうであるにもかかわらず、例えば株式と債券に半々で投資するバランス型投資信託を購入したら、どうなるでしょうか。
恐らく、購入した当の本人は、バランス型とはいえ元本割れリスクはあるわけだから、100ある資産のうち50を預貯金で、残り50をバランス型投資信託で持つのが、自分にとってリーズナブルなリスクだと考えるかもしれません。
しかし、よく考えてみてください。株式と債券に半々で投資するバランス型ファンドだとしたら、50でリスクを取ったつもりでいても、実はその50のうち25は、債券によって安定運用されていることになります。
つまり、ポートフォリオ全体で見ると、リスクを取っているのは50を配分しているバランス型投資信託の25の部分だけであり、保有資産全体で見ると、ほとんどリスクを取っていない、ということになるのです。
もちろん、全資産を1本のバランス型投資信託で運用するのであれば、バランス型投資信託で運用する意味はあるのですが、投資信託1本で全資産を運用する人は、ほとんどいないでしょう。
元本割れリスクのコントロールは商品単体で行うべきものではなく、自分が持っている全資産のなかでコントロールするものです。このように考えると、バランス型投資信託や債券型投資信託は、特に買う意義が見当たらないということになります。
販売金融機関が提案する安定運用という言葉をうのみにせず、自分で考えてリスクをコントロールするクセを付けることが、自分で納得のいく資産運用をする第一歩になるのです。