「個人向け社債」をご存じでしょうか。文字通り、個人向けに発行されている社債のことですが、基本的に社債は機関投資家向けに発行されており、個人向けに発行されるのはまれです。

ところが、大和総研のレポートによると、2022年度は個人向け社債の発行額が過去最高になりました。そこで今回は、個人向け社債とは何か、投資する際の注意点などについて、考えてみたいと思います。

個人向け社債の規模感

まず、個人向け社債を取り巻く環境から見ていきましょう。

2022年度における個人向け社債の発行額は、アイ・エヌ情報センター『発行市場レポート』(2023年7月20日)によると、2兆2162億円、案件数は45件でした。

ちなみに過去、発行額が大きく伸びたのは2008年度の2兆144億円と、2016年度の2兆1495億円でした。なお、2023年度については、6月30日時点で5985億円とのことです。

個人向け社債の発行額は、社債市場全体で見るとごく一部に過ぎません。2022年度における普通社債全体の発行額は12兆8598億円でした。また2021年度の発行額は約31兆円ですから、過去最高額とはいえ、個人向け社債の発行額は、それほど大きくはありません。

個人が社債を買うメリット

そもそも普通社債の最低購入金額は、多くが1億円であり、その意味では機関投資家向けのマーケットと言えるでしょう。

とはいえ、個人向け社債の歴史は意外と古く、その始まりは1992年に発行された近畿日本鉄道債にまでさかのぼります。それを発行する企業にとっては、資金調達先の裾野を広げることで、安定した資金調達が行えるというメリットがあります。

一方、それを購入する個人投資家にとっては、預貯金に比べて高めの利回りで運用できる点が魅力と言って良いでしょう。もちろん発行体となる企業の信用格付け次第のところもあります。

たとえば2023年4月14日に条件決定したソフトバンクグループ社債の利率は年4.750%です。ソフトバンクグループ社債は、他の個人向け社債に比べて、抜きんでて高い利率です。

その他も、たとえばGMOフィナンシャルホールディングス社債の年1.52%、光通信社債の年1.11%など、総じて預貯金利率に比べて高めとなっています。

ちなみに定期預金の利率は、預入金額の多寡、預入期間の長短に関係なく、メガバンクだと年0.002%程度です。