データを読む上での注意点

まずはこれらの数字を見ながら現在のご自身の暮らしを比較してみてください。収入はどうか、支出はどうか、それぞれの項目で乖離が生じているところはどこかというのがポイントです。

注意したいのはすべての世帯で住居費が非常に少ないということです。全国平均とはいえ、家賃であれば安すぎる印象です。想像ですが、持ち家率が高く表示の金額は固定資産税とか住居を維持する費用と考えると、金額的にも納得感が出るのではないでしょうか?

すると住宅ローンを負担している方であれば、勤労世帯の例では黒字が18万円発生していますから、その金額と比較しローンの負担が大きいのか小さいのかを考えることもできます。また完済年齢によっては、老後の暮らしに大きく影響するのが住宅関連費用であるとも考えられます。

仮に現在のあなたの暮らしが、勤労世帯の家計収支と同じだとしましょう。すると、毎月の黒字分のいくらかを将来に向けて貯蓄が可能であれば、高齢無職世帯になった時の家計の赤字をカバーできると言えます。

例えば毎月の黒字18万円のうちの5万円を老後資金として50歳から65歳までの15年間積立をしたとしましょう。比較的運用リスクをとらない前提で3%運用をしたとしましょう。ここでは、運用益に課税されないNISAやiDeCoを利用します。すると、15年後の資産残高は約1130万円となり、先に計算した老後の不足額1050万円はカバーできます。

リスクをとるような運用は絶対にイヤだということであれば、月5万円をコツコツ積立預金をすれば15年間で900万円貯められます。月の積立を6万円に増やせば15年間の資産は1080万円となり、やはり老後の不足分はカバーできます。

介護を想定するなら、さらに準備すべき金額は増える

では、介護の費用はどのくらいかかるのでしょうか? 公益財団法人生命保険文化センターの調査によると在宅介護を行った場合の費用は月4.8万円、施設介護の場合は月12.2万円としています。また同調査によると要介護度別介護費用は、最も介護度の重い要介護5で月費用が10.6万円です。これらは公的介護保険を利用しての自己負担分の金額です。介護に関してもさまざまなデータが出ていますが、介護が必要な期間は平均5年くらいですから、仮に要介護5で5年介護を受けると600万円はかかると予想できます。

もし夫婦でそれぞれの介護費用として600万円を見積もるのであれば、老後に必要なお金は1050万円ではなく2250万円となります。

前述通りの計算をすると、運用益3%を見込んだ場合50歳から月10万円を積立投資すると15年間で2270万円程度をつくれます。運用しなければ月12.5万円の積立が必要です。

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要は老後に向けてさまざまな想定をもとに、目標とする資産額を出し、それに向け積立計画を立て実行することがとても重要だということです。さらに言うと、平均データに頼るのではなく、実際の家計収支と将来の年金額の把握が最初の一歩であることがご理解いただけたのではないかと思います。

結局のところ、将来の安心を手に入れるには、現状を把握し、するべきことをコツコツ実行するしかないということです。