年金を貯蓄だと思ってはいけない

50歳を過ぎるとさすがに老後を意識する方が増えてきます。そして「年金」が時折話題にのぼるようになるお年頃でもあります。年金って一体いくらもらえるのか? いつからもらえるのか? 老後の生活は年金だけで大丈夫なのか?

「高い保険料を払ってるのに、もらえる年金が少なくてがっかりしたよ」とお酒の席で誰かが口火を切ると、やれ少子高齢化で年金制度は崩壊するとか、俺たちの頃はきっと年金なんてもらえなくなるぞ、などとにわか評論家の討論会になったりします。

でも、それって全部誤解です。年金制度は崩壊しませんし、私たちの老後の暮らしを支える太い柱として頼れる存在であるのは紛れもない事実です。多くの方が少子高齢化を嘆きますが、年金は賦課方式なので、年金財政が健全かどうかは、収支のバランスがとれているかどうかで測ります。つまり、入ってくるお金と出ていくお金の帳尻があえば、年金制度は持続可能なのです。

確かに日本の人口を65歳という年齢で区切り、それ未満を分母にそれ以上を分子とすると、分子がどんどん大きくなって仮分数になっていきます。これがいわゆる、「おみこし型から肩車型」へのシフトです。しかし、その区切りを「年金保険料を払う現役世代」と「年金受給者」として分数に直すと、年金制度が出来た1960年代と現代のバランスはそう変わっていないのです。この収支バランスをさらに強いものにするための対策が、高齢者の就労促進や適用拡大といった昨今の施策です。従って、年金制度の行く末を案じるのであれば、私たち一人ひとりが年金制度の支え手であるという意識をもっと強く持ち、関わっていくべきなのです。

老齢年金は「長生きリスク」に備える「長生き保険」

そもそも年金は「もらうもの」ではありません。もらうなんて言っているとある一定の年齢になると、自動的にみな同じくらいの年金が「もらえる」とついつい他力本願になってしまいがちです。しかし、年金は「もらうものではなく創るもの」、つまりあなたは働き保険料を納めることで同時に将来の自分の収入を創っているのです。

もちろん年金は貯蓄でもありません。年金は保険ですから、いくら払っていくら受け取るという単純な損得で語るものではありません。老齢年金は、どんなに長生きしても必ず予定された金額が受け取れます。これはまさに「長生きリスク」に備える「長生き保険」です。