NISAとiDeCoは世界的な流れ

NISAはイギリスを、iDeCoは米国をそれぞれ参考にしてつくられています。語感のよさも相まって、今やすっかり定着した、「NISA(ニーサ)」という呼称ですが、じつはこれはイギリスの個人貯蓄制度である「ISA(アイサ)」の頭文字に、日本版の「N」を付けたものです。

本家のイギリスの「ISA」は、個人の貯蓄や投資を促進する目的で1999年に導入されたイギリス居住者向けの制度です。ISAでは、日本がお手本にした株式型のほかにも、預金型など複数が用意されており、いずれも税制優遇措置が受けられます。

イギリスの場合、制度開始当初の非課税限度額は、株式型が7千ポンド(約113万円)、預金型が3千ポンド(約48万円)という内訳でした。その後、何度かの増額を経て、現在は株式型と預金型あわせて2万ポンド(約325万円)の非課税枠が認められています。

当初、イギリスも10年間の期限付きの制度として導入していたのですが、若年層に普及したことなどが評価されたことから、導入9年目に制度が恒久化されました。約10年の年月を経て非課税投資枠が拡大され、制度も恒久化された点は、日本と共通しています。

また、iDeCo を含む、日本の確定拠出年金制度がお手本とした、米国の確定拠出年金制度(401k)は、1970年代後期に制定され、80年代から90年代にかけて普及が進みました。

米国の確定拠出年金制度の詳細については割愛しますが、月々の給料から天引きして拠出でき、加入者に税制面のメリットがあるという点は日本と同じです。

米国は、日本と比べて良くも悪くも雇用の流動性が高いので、転職時に容易に持ち運べて節税メリットを享受しながら老後資産をつくれる確定拠出年金は、米国民の高い支持を集め、急速に拡大しました。

1980〜1990年代にかけて制度に加入し、拠出を続けた「第一期生」には、第二次世界大戦後に誕生した、いわゆるベビーブーマー世代が多く含まれます。人口の多いこの世代は、2000年代初頭のITバブルや、2000年代後半のリーマンショックに直面しながらも、着実に成長を遂げた米国株式市場の恩恵を受け、十分な資産をつくることができました。

こうした「第一期生」の成功体験は、子どもや孫世代にも受け継がれ、完全なインフラと化しています。

このようなイギリスや米国の成功に続くように、現在、オーストラリア、香港、インド、ニュージーランド、メキシコ、チリ、スウェーデン、ポーランドと、地域に関係なく、世界中で導入と活用が進んでいるのです。

日本を含め、大多数の国は任意加入を基本としていますが、たとえば、オーストラリア(スーパーアニュエーション)は強制加入です。その結果、今や個人金融資産の約半分が、スーパーアニュエーションによって占められるまでに成長しています。

このような世界的な状況を見れば、「自分のことは自分で」という政府の方針に対して「国民にさらなる負担を強いるのか」という批判の報道は少々的外れだということが、よくおわかりいただけるのではないでしょうか。