出資先の破綻で経営危機 救ったのはあの企業

好調なインターネットイニシアティブも、過去には危機的な状況に陥ったことがありました。原因は出資先企業の業績不振でした。

インターネットイニシアティブは1998年10月、ソニーやトヨタ自動車と共同で通信キャリアのクロスウェイブ・コミュニケーションズ(以下:CWC)を設立します。データ通信専業の通信会社で、インターネットの拡大期に大きく成長し、2000年には米ナスダックに上場も果たしました。

しかし先行投資の負担や競合との価格競争が経営を圧迫し、CWCは資金繰りが悪化します。同社は自主再建を諦め、2003年8月に会社更生法の適用を申請しました。業績不振は出資者のインターネットイニシアティブにも波及しており、2002年12月期には債務超過に転落していました。

【当時の資本の推移(2002年6月期~2003年6月期)】

出所:インターネットイニシアティブ 決算短信

これを救ったのがNTT(日本電信電話)です。2003年9月に約120億円の第三者割当増資を引き受け、インターネットイニシアティブは債務超過を解消します。この資本取引により、インターネットイニシアティブはNTTグループ入りすることになりました。もっとも、グループ入りしてからもNTTは経営に積極的に介入せず、インターネットイニシアティブとは良好な関係が続いていたとみられています。

この関係性に変化が生じることとなったのは2023年5月のことです。NTTは今でもインターネットイニシアティブ株式の22.4%(2023年3月末時点)を保有する筆頭株主ですが、うち10%分をKDDIに譲渡することとなりました。NTTは筆頭株主の地位を維持しますが、インターネットイニシアティブはKDDIと人材交流も視野に入れた協業関係を構築するとしています。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)