「人生100年時代」に惑わされない!

理由③片づけるには体力が必要

「人生100年時代」といわれるようになって久しいですが、日本人の平均寿命は延び、90歳近くまで生きる人も増えてきました。90年と聞くとずいぶん長いと思ってしまいますが、これは大きな間違いです。

90年として3等分すると、0歳〜30歳からの30年、31歳から60歳までの30年と、61歳から90歳までの30年では、同じ時間の流れにはなりません。体力面でまったく異なり、最後の30年の中間くらいに、健康寿命がやってくるからです。

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことをいいます。2019年のデータになりますが、日本人の平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳。一方、健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳となっています(厚生労働省調べ)。

私はよく自治体などの主催で、高齢者対象の生前整理の講座の講師をさせていただきます。参加してくださる方は、この健康寿命の前後の層が一番多く、80歳を過ぎる方も混ざります。それぞれ、将来や健康などの不安を抱えて講座に参加してくださっている印象です。

みなさん、前向きで意識が高い方ばかりです。勉強熱心でお元気なのは素晴らしいのですが、もう少し早めに講座を受けられたり、片づけをスタートさせていたら、もっとラクに取り組めるのに、と思うことがあります。

できれば健康寿命がやってくるまでに、せめて持ち物だけでも整理し、自宅をリフォームして高齢になっても安心なバリアフリーにしたり、終(つい)の棲家(すみか)への引っ越しを終えるのが理想です。そして住まいの老いじたくをするためには、60代で「紙モノ」整理を終えておく必要があるのです。

●第2回(コスパ最悪、評価も面倒…AIでも「紙モノ」整理が高難易度なのは一体なぜ?)では、“プレ終活”として重要性を増しているはずの「紙モノ」整理が、多くの人から後回しにされてしまう理由について解説します。

『「これから」の人生が楽しくなる! 60歳からの「紙モノ」整理』

渡部亜矢 著
発行所 青春出版社
定価 1,650円(税込)