保険、年金、資産……人生後半になると一気に増えてくるのが、こうしたお金関係の“紙”。充実した老後生活を送るには、そうした書類の内容を理解して、時には取捨選択しながら、整理していくことが欠かせません。

話題の書籍『「これから」の人生が楽しくなる! 60歳からの「紙モノ」整理』では、将来への不安を軽減するための書類整理について、片づけ講師・渡部亜矢氏が優しく解説。今回は本書冒頭の『はじめに』、第1章『片づけで一番大切な60歳からの「紙モノ」整理』、第4章『財産の「見える化」で不安が消える! 「お金モノ」の整理』を特別に公開します。(全3回)

●第1回:保険、年金…「重要書類」をしまいこんだり、放置することがもたらす“恐ろしい事態”

※本稿は、渡部亜矢著『「これから」の人生が楽しくなる! 60歳からの「紙モノ」整理』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

「プレ終活」としての「紙モノ」整理

たかが紙、されど紙。「紙モノ」整理をあなどってはいけないことが、第1回からおわかりいただけたでしょうか。

私は「紙モノ」整理を、卒業、成人式、定年の延長線上にあり、家族や周りの人とも向き合っていく、人生を充実させるための新しいライフイベントと考えています。家族だけでなく、周りにも大きな影響を及ぼす社会的なイベント=行事として捉えて、早めに取り組むことをおすすめします。

60歳からの「紙モノ」整理は、成熟した大人のたしなみ、マナーに近いものです。そして終活前の人生の棚卸しであり、「プレ終活」の1つといえるでしょう。

この棚卸しができていないと、エンディングノートも財産目録も遺言書も書けません。

なぜ、紙の整理を先のばしにしてしまうのか

この記事を開いてくださった方は、「いつかは『紙モノ』の整理をやらねばならない」と思ってきたのではないでしょうか。それでもつい先のばしにしてしまうのは、「紙モノ」整理の難しさにあります。

大きな原因は、一般的なモノの整理とは決定的に違う特徴と、世代的な要素のダブル構造になっているためです。それゆえに、ほとんどの方が原因のどれかに当てはまってしまい、身動きがとれなくなっているのです。

「紙モノ」整理ならではの特徴と、世代的な要素には、次のようなものがあります。

特徴①普通のモノより「紙モノ」は重要度が高いという思い込みがある

書類や本、雑誌など、紙にはたいてい文字が書かれています。文字はモノとは違うので、知識欲のある方ほど、ほかのモノよりも大事だと思ったり、重要な情報は逃してはならないと感じがちです。文字が書かれた「紙」そのものを、普通のモノより格が上だと、無意識的に思う傾向があります。

そのため、まったく必要のないチラシでも持ち続けてしまったり、決して読むことがない本や雑誌、新聞を「重要品」だと意識してしまい、とっておいたりします。見返すことのないメモや、期限切れの旅行のパンフレットなども同類です。